第3章 引っ越し
俺の心臓はバクバクしてた。
いや、別に…いいんだけど…
最近、ニノの顔見てるとヘンな気分になってきてしょうがない。
かわいいって思ったり。
手を繋ぎたいって思ったり。
変でしょ…男相手に…
しかも、もう何年一緒にいると思ってんだ。
裸なんて見慣れてる。
風呂だって一緒に入ったりもしてる。
でも…違うんだよ。
ここで、この家でそれをするって…
ニノと暮らすって。
案外、俺、しんどいかもしれない。
我慢、しなきゃいけないから。
気分を落ち着けるために、アトリエに下りた。
二階からの階段を降りるとすぐ、廊下を挟んで左手にアトリエへの渡り廊下がある。
そのドアを開ける。
ミシッと音がする2段だけの階段を下りて、短い廊下を歩く。
もう一個ドアを開けるとそこは、アトリエだ。
もう外は暗い。
今日は空気が澄んで、痛いくらい寒い。
月光がレースのカーテンから淡く室内に入ってきてる。
持ってきた俺の画材や道具をそっと棚や机に載せてみる。
ここは一番後回しにしようと思ってたけど…
なんとなく、何も考えたくなくて手を動かしてた。