第9章 FREEDOM
トンネルは思ったよりも小さくて。
「え?これ普通のトンネルじゃないの?」
「これ、中央線のトンネルだったの」
「ええ!?マジで?」
いつも使ってた中央線と聞いて、俄然興味が湧いた。
赤い褐色に変色した石を積み上げてあるトンネルは、時代を感じさせた。
「これ、できたの明治時代なんだよ」
翔ちゃんが教えてくれる。
「凄いね~人間って」
和也が感心して回りを見渡してる。
天井は真っ黒になってて、煤みたいなのがついてる。
「これは蒸気機関車がここ走ってたからついた、煤なんだよ」
また翔ちゃんが教えてくれた。
中に進んでいくと、ひんやりしてきた。
蛍光灯の灯りを頼りに、どんどん中に進んでいく。
地下に降りて行っているわけじゃないのに、地下へ入っていくような感覚。
トンネルの出口は見えない。
暫く行くと、壁が凹んでて、待避所って書いてある。
イタリア映画に出てきそうな、バーの入口みたいだった。
煤けたレンガがいい味を出してる。
歩いても歩いても出口は見えてこない。
蛍光灯がついてても、ほの暗くて。
ふいに翔ちゃんが手を離した。