第9章 FREEDOM
三人で手をつなぎながら歩いていると、看板が見えてきた。
『大日影トンネル遊歩道』
「翔ちゃん、あれ、なんて読むの?」
「ん?オオヒカゲって読むの」
「ふーん。そのまんまか…」
「ここはね、平成9年まで使われてたトンネルなんだよ」
「へえ~」
和也が感心したように翔ちゃんに顔を向けるが、俺と繋いだ手を見ると、一瞬目が悪鬼羅刹のように光った。
でもなんにも言わないで、普段通りの顔に戻した。
あれ?
「翔さん」
「ん?」
「この旅行中だけだよ?」
「え?いいの?」
「いいよ」
ちょっと…待てよ。
「おい…なんのことだよ?」
「別に。俺、負けないもん」
「へ?」
「だから、そのくらい平気」
いつもヤキモチの塊みたいな和也が、耐えてる…
「智は、俺が好きって自信あるもん」
翔ちゃんに聞こえるように言った。
翔ちゃんはふっと笑って前を見た。
「じゃあ、遠慮無くさせていただきますよ。あの二人にもそう言っとくから」
その横顔は、完全にいたずらっこの顔になってた。
まて…お前ら…
また俺をおもちゃにする気か…