第8章 ミュシャ
和也が立ちあがって、キッチンへ向かった。
相葉ちゃんが茶碗を洗ってるから、手伝いに行ったんだろう。
俺は伸びをすると、すっかり片付いたリビングから出た。
アトリエで絵を書こうとしたけど。
実はさっき、和也と蔵に居る時すごいものを見かけたから、それを確認したいと思って…
台所に入って、和也と相葉ちゃんに手を振ると、庭に出た。
勝手口に蔵の鍵があるから、こっちから出るしかない。
翔ちゃんが後ろからついてきた。
「あれ?」
「あ、潤なら歯を磨かせて寝かせたから。こっちくるの見えたからさ」
「あ、俺、蔵いくけどいい?なんか話あった?」
「ううん。別に。一緒に行っていい?」
「いいけど…つまんないよ?」
そのまま二人で歩いて蔵に入った。
えーっと…
「あっ…やっぱり…」
蔵の畳が積んである奥。
そこに何枚もカンバスが置いてある。
多分、ばあちゃんが描いたもの。
でもその中に一際大きいカンバスがあって。
そこからちょっとだけ絵が見えた。
手にとってそれを引っ張りだすと、絵の全体が見えた。
「やっぱりそうだ…」
「あ、なんか見たことある…」