第2章 アインシュタインなあいつ
「ニノ、寒くない?」
「ん?ちょっとだけ」
俺は片手で自分の首からマフラーを外して、ニノの首に巻いた。
「え?いいよ…これ…」
「いいから。もうちょっと付き合って」
「…うん…」
俺は楠の下のベンチにニノを連れて行った。
木のベンチは、寒いけど座ると少し温かくて。
またそうやって二人で家を眺めた。
ニノは俺のマフラーに顔を半分埋めた。
「なんで、そのおばあちゃん…大叔母さんと、旦那さんは5年しか一緒にいられなかったの?」
「ん…結核だったんだって。旦那さん」
「結核…」
「そんときは、治すことができなくて、亡くなっちゃったんだって」
「そっかあ…おばあちゃん、辛かったね」
それから60年近く、一人でここに住んでいたことになる。
よく孤独を耐えられたと思う。
すげーな。
ばあちゃん。
「あ、あれって蔵?」
「うん。蔵」
「わ、凄いねえ…」
「あそこだけ、遺品っていうか…まだばあちゃんの物が入ってるんだ」
「へえ…何があるの?」
「あんまり無いんだけど、着物とか。絵とかだって。まだ俺もちゃんとは見てない」
「そっかあ」
ニノの手はもう暖かかったけど、俺は手を離すことができずにいた。