第2章 アインシュタインなあいつ
息が、白い。
俺とニノは家を眺めたまま、しばらくぼんやりと座っていた。
「気に入った…」
ニノがぽつりとつぶやいた。
「え?何が?」
「この家、気に入ったよ」
「そう…」
別に住むわけでもないのに、変なやつ。
「じゃあ、引っ越したら遊びに…」
「住んじゃおうかなー」
「は、え?」
「家賃、払わなくていいでしょ?」
「な、なに言ってんだよ…無理に決まってるだろ…」
「なんでよ?女連れ込む日は、ちゃんと外出るよ?」
「そ、そういう問題じゃないよ」
「じゃ、どういう問題なの?」
「お前だって女連れ込めないだろ」
「俺はお外で済ませます」
「じゃ、俺だってお外で済ますよ」
「じゃ、決まりね?」
「え?」
「それ以外、なんか問題ある?」
ポケットの中のニノの手が、汗ばんでいる。
なんでだろ。
真剣なのかな…本気なのかな…
「ま、マジで言ってんの?」
「ん」
「に、ニノ…」
「ダメ?」
「いや…ダメじゃないけど…」
「じゃ、決まりね?」
そう言ってニノはまた、あっかんべーをした。
アインシュタインにそっくりの顔。
俺の手をまた、ニノがぎゅっと掴んだ。