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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい


「うはー、凄いな」
彼岸花は水が滴る髪を絞りながら、呟いた。
岩融の怒濤の切りは強く、彼岸花は圧倒されると同時に魅了されている自分を感じた。
(この様子なら、本当にいけるかも。)
呑気にそう思いながら、無駄に重い服を気にする。
………それに気づけたのは本当に偶然であった。
彼岸花はこの時、確かに自分達の勝利を確信していたし、細切れになる様は見ていて気分の良いものじゃかったし、服が張り付くのを面倒だとしか思っていなくて、だから岩融の方は見ていなかった。
だけど、それには気がついた。
亜種の尾が静かに伸ばされる。
彼岸花は、瞬間、叫んだ。
「岩融さん!」
叫んで、前田が持っていてくれた本体を渡してもらう。
それを抜きながら、彼岸花は走り出した。
間に合えっ!!
尾が岩融の頭を真っ直ぐに貫こうとする。
お前はトカゲかっ!なんて思いながら、その尾を切り落とす。
「くらいやがれっ!!」
男らしく叫んでみれば、尾が静かに宙を舞った。
間に合った。そう自覚すると息が重たく口から出ていった。
背後にいる岩融との距離は数メートル。危なかった。
岩融を振り返ると、丁度亜種との戦闘が終わったようで彼も此方を見た。
だが、次の瞬間勢いよく視線を逸らされる。
「何故そんな格好なのだ!!」
怒鳴られるが彼岸花としては何の事を言われているのかわからない。
「はぁ………?」
聞き返すと、岩融は自身の肩口を掴む。
彼岸花はそれで、自分の肩口を見た。
「ッゲ!破れてるよ、うわー。………というか、これくらいで照れないでください」
肩どころか、女の裸体くらいは見たことがあるだろうに。
彼岸花はあまりにも純情な岩融に呆れを通りこして心配になってきた。
「知らぬわ!情けないことくらい、自分でも解っておる!!だが………見れぬのだ」
「はぁ??まさか、見苦しいっていう遠回しの嫌味ですか?」
「だったら、これ程までに照れたりなどせんわ!!」
岩融に怒鳴られて彼岸花は呆然とする。
(何を怒っているんだ。この人……………)
情緒不安定にもほどがある。
彼岸花には岩融が何を怒っているのか解らないし、彼が何にそこまで過剰な反応を示しているのかなんてもっと解らない。
(なんだ………?)
彼岸花は一つ大きな謎を抱える羽目になったのである。
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