第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
ーーー「奴を倒します」
「じゃあ、肩は貸さなくていいんですね?」
「くどい。いらぬわ」
岩融が自身を杖のように使って歩き出したところで、彼岸花もゆっくりと歩き始めた。
………歩き始めて数分後に気が付いたが、例の前田平野が着いてきているのだ。
此方に気づかれないようしている時点で彼等も追うのが悪いことまたは危険なこと、というのは解っているのだろう。
(それでも、追ってくるか………)
岩融を横目で見ると、彼も気が付いているらしく、少しだけ背後に視線をやって見せた。
「…………………………はぁ。しょうがないな、おーい君達。このおっかないお兄さんも怒らないから出てらっしゃい」
「お前におっかないなどと言われたくないな」
「そうは言うけど、貴方と私が路上で突っ立っててごらん。道を尋ねる人の九割九分は私に話しかけるよ」
「だから、なんの話をしておるんだ!………ええぃ、お前たちも出てこい!こいつと二人は神経がもたん!」
ひでぇ、と彼岸花が思っていると前田と平野がうつむきながら出てきた。
「こんにちわ。どうしたの?」
彼岸花の問いに、二人はグッと顔をあげて答えた。
「「僕らにもお手伝いをさせてください」」
流石双子………じゃない、兄弟。驚くほどのユニゾン率だ。
(双子にしか見えないよなぁ………可愛い)
案外子供好きの彼岸花はぼんやりと二人を見る。
一期さんが羨ましいぜとかなんとか思いながら、二人の言葉になんと返すかを考える。
「お手伝いって………うーん、いや、君達私よりは絶対強いとは思うけど………何故手伝いをしたいの?」
彼岸花が聞くと、平野が一歩前に出て話す。
「このままでは、帰れません。理由は、沢山ありますだけど……………一番は」
「悔しいんです。刀として」
前田が言い切った。
彼岸花は、環境と経験によってこうまで違うものかと、自本丸の前田を思い出しながら内心呟いた。
(うちの前田くんは戦うことより兄弟と居ることを選んだんだけどな)
どちらが正しいとは言えない問題である。
一先ず、彼岸花は岩融の意見をあおぐべく岩融を見た。
「…………………………お前たち、本気か?」
「はい。もう、引けません」
平野が言う。
「……………奴を倒せば、刀として救われるか?」
「少なくとも、心は軽くなります」
前田が頷いた。
