第2章 はじめまして私の異能/太宰さん
「えっと、小泉やくもです。よろしくお願いします」
控えめに身を折ると、まばらな拍手が響いた。さっきお茶を出してくれたセーラー服ちゃんが進み出る。
「谷崎ナオミと申しますわ」
綺麗な顔立ちが華やかに綻ぶ。続いて、眼鏡の女性も笑いかけた。
事務員、たったの三人? 随分少なくありませんか?
「今日は非番の方が多いから……。今出てる人もいるし、後でまた挨拶しようね」
「わからないことがあったら、何でも聞いてくださいね」
ナオミさんが笑う。入社試験がハードだったから心配してたけど、先輩もいい人そうで良かった。
……けどまあ、現実はそう甘くはないわけで。
「やくもちゃんだっけ? 冷蔵庫の甘味食べたの君?」
細目の男性が回転椅子を回して問うてきた。ち、違います!
「来客だよ、誰か茶でも出しときな」
「このお金振り込ンできて欲しいンだけど……」
「電話鳴ってますよー」
「おい、太宰が消えたぞ!」
「それも事務員の仕事なんですか!?」
……もう、対処しきれません。
日曜だというのに、社の皆さんはせわしなく働いていた。先輩さん達も、事務仕事から雑用まで大忙し。仕事を丁寧に教えてもらう暇なんかない。
でも、いつまでもぼーっと突っ立ってもいられないよね。
「あの、そのお金私が振り込んでおきます」
「有難う。銀行に行ッて、このメモのとおりに言えば判ッて貰える筈。宜しくね、小泉ちゃん」
「はい!」
茶髪の男性から茶封筒を受け取って、社を出る。階段を降りる途中、太宰さんに話し掛けられた。
「やくもちゃん出掛けるの?」
「はい、銀行迄」
「私も付いて行くよ」
太宰さんがにわかに顔色を変える。
「いえ、郵便局暗い一人で行けますから、ご心配なく。それより、上で探してましたよ」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫ですって……わっ」
いきなり太宰さんが私の手首を掴んできた。闇色がかった瞳が私を覗き込んでくる。
「くれぐれも、気をつけて」
「は、はぁ……」
太宰さんは包帯付きの手をひらひらと振って、階段を上がって行った。
「……変なの」