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【文スト】異能持ち事務員ののんびりライフ【完結】

第2章 はじめまして私の異能/太宰さん


 (あれ、ここどこだっけ……。)

 研修期間を兼ねた初出社の日。あろうことか、私は見事に道に迷っていた。

 社の位置はさんざん確認したし、面接の日に訪れたこともある。
 昨日だって迷わないよう行って、あの社屋を確認した。

 なのにどうして、今日に限って迷うのだろう。

 見慣れない景色をきょろきょろしながら歩き、地図とにらめっこしても、知った道にたどり着けない。

 今私は住宅街をぐるぐると歩き回っていた。
 似たような塀、時々電信柱の殺風景な眺め。家と家の間の路地に入ったりしてみても、延々と似たような風景が続く。
 人ひとりいない寂しさに、私は一人で身震いした。

 大丈夫、大丈夫、大丈夫。まだ間に合う。
 これ以上行っても社に辿りつけないのなら、携帯で探偵社に連絡しよう。
 そう思って鞄を握り締めた。生憎私の携帯は旧式で、現在地を表示してくれる機能はない。

 なす術もないまま歩いていると、路地から白い虎が現れた。って、虎!?
 虎!? この何の変哲もない路地に、と、虎!?

 そう言えば少し前、人食い虎が世間を騒がせた。探偵社が駆除したと発表されたけど、もしかしてその仲間なのかも!
 恐怖で立ちすくむ私を尻目に、虎さんが吠えた。

 「っ、ひゃあああっ! 誰か!」

 怯えて叫ぶけど、誰も来るわけない。私は意を決して、虎さんを鞄で叩いた。ごめんね!

 「えいッ」

 もちろん鞄ひとつでは虎に勝てないから、虎さんが怯んだすきに、私は一目散に逃げ出した。

 路地を曲がったところで、私は誰かにぶつかった。
 背のたかい、手に包帯を巻き付けた男の人。長い外套を纏っている。

 「逃げましょう! そっちには虎がいます!」

 叫んだ私に、青年は優しく微笑みかけた。

 「君が小泉さんだね?」
 「え?」

 唐突に名前を呼ばれ、思わず足が止まった。
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