第2章 はじめまして私の異能/太宰さん
『やくも、あなたまだ就職決まらないの?』
卒業の季節も近づき始めたある日の夜、田舎のお母さんから電話が掛かってきた。
普段なかなか便りをよこさない娘を心配しての心遣いだろう。
不安そうな声音のお母さんに、私は告げた。
「知り合いの伝手で、武装探偵社、というところに内定もらってるの。こっちでは有名なんだよ」
『ぶそう探偵? あなた探偵になるの?』
「ううん、私は事務員。資料の整理とか、裏方のお仕事」
『そう、頑張るのよ。やくも昔から少しそそっかしいから。じゃあ、また掛けるわね』
「うん」
『何かあったら、すぐ電話するのよ?』
「お母さんも、体に気をつけてね」
頷き、電話を切る。
武装探偵社は荒事中心なのだが、それはあえて言わないでおいた。
言ったら、とんでもなく心配性なお母さんに就職を妨害されてしまうかもしれない。
荒事なんてとんでもない、うちのやくもにはそんなことさせられない、と。
怪我でもしたときのために、言っておいたほうがいいのはわかっているけど、それでも今は駄目なんだ。
真面目に頑張っても、小さなミスの積み重ねで着実に成績を落としていく私にやっともらえた内定。逃したくはない。
握ったままだった受話器を置いた。
明日は初出社の日だ。
お母さんのためにも、探偵社では絶対に失敗をやらかさないようにしよう、と誓い、その日の私は眠りについた