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【刀剣乱舞】守護者の恋

第12章 本能寺(長谷部の章)2


明智光秀、謀反を知った信長の待ち伏せにより、返り討ちにあって死亡。
想像を超える大きな改変に誰もが呆然としているところ、長谷部が荒々しく叫び、その場から走り出した。
「……お前たちは、今すぐ本丸に戻れ!」
「ちょっ……長谷部ッ!?」
それだけを言い残して、火の手があがる方向へ長谷部は走っていく。
「薬研、頼む!」
山伏の叫びの意味を察して、薬研が駆け出した。
鯰尾を抱えたままの御手杵は走れない。かといって彼らだけを置いていくのは危険すぎる。


「二人がどういうやりとりをしたかはわからないが、戻ってきた薬研はもう声が出なくなっていた。ただ、どうやら薬研の声が出なくなった故、長谷部が不承不承戻ってきたようで」
山伏は通る声ではっきりと審神者に説明をする。横にいる御手杵もうんうんとうなずいた。
「ふむ」
「それからこちらに戻ろうとしたが、いつものような光が見えなんだ。それは改変のせいで、もう我らは戻れぬのかもしらん……そうあきらめかけた時、長谷部が一人だけ『見える』と言い出して」
「その少し後に、声が出なくなったんだよな」
「うむ」
「だけど、俺達が戻ってきたここは、いつもと変わらない本丸だった。ここは、織田信長が本能寺の変で死んだ歴史の先にある本丸なんだよな?」
おずおずと御手杵がそう言いながら部屋を見て、審神者を見て、山伏を見る。どことなくそれは「そうだと言ってくれ」という願いを感じさせる様子だった。
戻ってきた彼らがすぐに「歴史を改変された」と騒がなかった理由の一つは、それをみなの前で口にしてよいかわからなかったということ、本丸の様子が、今御手杵が言うように「正しい歴史の先にあるいつもの本丸」であり、歴史改変の片鱗を感じさせなかったことがある。
それへ、審神者はゆっくり首を横に振った。
「改変された歴史が既に未来を生きている者のところへは緩やかな波のように影響をして、表面化するには時間がかかる。そんなにすぐに影響するならば、みんなが過去に遡った時点で歴史は動き、大きく改変されてしまう。だから、とても静かに、わずかに、緩やかにたどり着くものだ」
「それでは、わからぬということか」
「たとえば、明日の朝起きたら、庭の花が違う花になっていたり、意識が薄れて気がついたら君たちが刀に戻っていたり」
山伏と御手杵は顔を見合わせた。
「もしや、長谷部と薬研は」
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