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【刀剣乱舞】守護者の恋

第12章 本能寺(長谷部の章)2


ぽそりと薬研が呟けば、長谷部は眉根を潜める。
「既に改変された過去に、もう一度来られるのだろうか」
彼らは改変を目論む者達と戦っていたけれど、誰も「既に改変をされた過去にいたとしたら」どうすれば良いのかを考えたことはなかった。
本来それは彼らが考えるべきことではなく、完全に審神者の指示不足ゆえの問題と言える。
また、長谷部は「帰る」と言ったものの、彼らはいくつかの不安を抱えていた。
「改変された過去から現代の本丸に戻ったら、それは改変後の歴史の先に繋がる、改変された本丸なのでは」
そもそも戻れるのか。
そして、もっと根本的なことで言えば「自分達は存在し続けられるのか」という部分も誰かはちらりと思っただろうが、それをここで問うことは無意味だった。
「……チッ」
舌打ちをする長谷部。
どうしようかと惑っている間に、彼らにとっての新手が近くまで接近していることに彼はいち早く気づいたのだ。
「交戦は得策ではない。後退だ」
「おう」
「あいわかった」
「鯰尾、ちっと我慢してろよ」
「うん……」
御手杵は鯰尾を肩に担ぐ。出来るだけ傷に触らぬようにと気遣ってはいるが、誰もが気が気ではない。
本丸に戻るために彼らが「帰ろう」と道しるべを開けるには、それなりに集中が必要だったし、敵が近くにいる場所でそれを行うわけにはいかなかった。

落ち着ける場所を求めつつ敵部隊と思しき兵を避けているうちに、炎があがる方向へと彼らは追い立てられた。
本能寺の変は、圧倒的な武力差で本能寺を包囲したはずだった。けれど、不思議なことにそんな様子は感じられない。だから、彼らはついついそちらへ移動していることに気づくのが遅れた。
「っていうか、兵がいなさすぎじゃないか?」
さすがに不信に思い御手杵が言えば
「炎があがった時点で、ほぼすべてが終わっていたはずだ。逆の方角から撤退をしたのでは……」
答えている薬研の言葉の途中で、わあ、わあ、と人々の大きな声が遠くから聞こえてきた。みなは、好奇心を抑えることが出来ず、それへと耳を傾けた。
すると、とんでもない言葉が彼らの耳に飛び込んでくるではないか。
「討ち入り失敗!」
「討ち入り失敗!成功せざりき!」
そして、彼らの耳には更なる情報が飛び込んでくる。
瞬間、長谷部の表情が、薬研の表情が強張り、山伏も御手杵も眉根を寄せた。
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