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【刀剣乱舞】守護者の恋

第12章 本能寺(長谷部の章)2


大体、最初から様子がおかしかったのだ、と山伏は言う。
いつもならば朝出れば、遡った過去も朝。だというのに、彼らは本丸を出た直後、過去の昼過ぎを訪れた。
彼らが過去に遡るとき、おおよそは同じ日同じ時間で年が違う形になるけれど、時に、月日も合致しない場合がある。だから、それと同じように「今日はずれてるな」ぐらいにしか思わなかったのだ。
時差がどの程度かはわからないから、夕暮れを越えずに、夜戦になる前には戻ろうと長谷部は提案をした。それに異を唱える者はいなかった。

夕暮れ前、今日の最後の一戦と決めて本能寺近くで交戦をした際、鯰尾がほんの僅かに前に出すぎて集中攻撃を受けた。いつもならば一度の交戦でどれほどの怪我をしてもそうそう中傷以上になることはない。単純にそれは「運が悪かった」としかいいようがない事態だったという。
もともとの予定通り、即断で長谷部は帰ることを選びみなに告げた。それから
「だいぶ燃えてるな」
と、ぽつりと呟く。
少し離れた空が、大きくあがっている炎に照らされ、あまり見ることがない色に染まっていた。
それが一体何の炎なのか、彼らは知っている。
「時刻もズレていたが月日もズレていたな。今日はおかしい」
まさか、今日が「その日」だなんて誰が思っただろうか。
少し離れた場所にある本能寺から炎の手があがったのは、ちょうど彼らが交戦を始めた頃。もう一歩早くそれが起きれば、彼らは警戒をして近づかなかっただろう。
「おかしいな」
ぽつりと薬研。
「こんな時刻じゃなかった気がする」
「薬研はここで焼けたのだったか」
「いや、俺っちは安土城にいたから……でも、人の噂はどれもこれも、もっと暗くなって、いや、朝に近いぐらいで火の手があがったような……」
「幸運にもこちら側からの進軍ではなかったのだな。どれほどの兵が動いたかはわからぬが、火の手があがるまでまったく気づかなかった」
長谷部がそういうと、御手杵は即座に眉を潜め
「おかしくないか。大勢が動くはずなのに、時刻は予定より早い。でも火の手はあがってんだからソレなんだろ」
「……改変が既にされているのではないか」
その山伏のつぶやきに、みなは顔を見合わせた。
帰って審神者に報告をしなければ。誰もが同じことを思い描き、それから、はた、と気づく。
「報告して、そんで、次どうなるんだろう」
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