• テキストサイズ

【刀剣乱舞】守護者の恋

第9章 本当の名前


束穂が他の本丸を既に経験済みであったという話が周知されたが、その本丸が何のためにどのように始まってどのように終わったかは伏せられた。
試験的に本丸を作って、短期間運用をしていたのだ、と間違いではない説明を審神者がすれば、みななんとなくは不満げであれど、それ以上多くは問わなかった。
勿論、それでも詮索をしたい気持ちがみなに残るだろうことは明白だ。
審神者は、大部屋でずらりと刀達に囲まれて、茶を飲みつつゆっくり言葉を紡ぐ。静かではあるが彼の言葉の端々からは、束穂をあまり刺激しないようにとの念押しの気持ちがにじみ出る。
「色々聞きたいこともあるだろうが、人の過去だ。彼女が話したいと思えば話せることもあるだろうし、話したくないこともあるだろう。過去の本丸の
話はトップシークレット、いわゆる国家機密のようなものでね。ここにいる君達が知ったところで問題があるとは言えないが、本来守秘義務が発生することなんだ。だから、ほとんどのことは彼女は話せないと思う。小狐丸はまた別だけどね」
「それ、小狐丸に聞けばいいってことを遠回しに言ってるように聞こえちゃうけど?」
次郎丸が呑気な声音で核心を突く。
審神者は困ったように「ふふ」と笑うと
「そういうことかもしれないけれど、君らも昔の主のことを根掘り葉掘り聞かれても、そうそう答えないだろう?ああ、そりゃ答える者もいるだろうが。でもまあ、概ねそれと同じだよ」
と言って、自分で淹れた茶を口にして「駄目だ。束穂の茶じゃないと、あまり美味しくないな」と眉を潜めた。
「誰か、束穂に茶の淹れ方をならっておいてくれ。この大所帯では彼女は忙しすぎるからね」
そういってぐるりと見回せば、ちょっと心許ない短刀達が「はい!」と声をあげ、「承知いたしました」と長谷部と蜻蛉切が頭を下げる。「やれと言われれば」とは青江、「まあ、僕ならきっと美味しくいれられるよ」とは歌仙。その上、脇差のほとんどもやる気でこくこくと頷いているようだ。
その様子を見て加州はあからさまに「面倒だ」と言いたげな表情で「ちょっと人選しないと、教える方が逆に大変なんじゃない」と審神者に囁くのだった。
/ 160ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp