• テキストサイズ

【刀剣乱舞】守護者の恋

第1章 守護者の日常


「なんじゃなんじゃ、おんしゃ行かんのか」
「はい。わたしは仕事がありますので」
出かける寸前に、陸奥守が「そういうものは束穂が行く方がいいんじゃないか」とうがった意見を申し立てたようだが、当然のようにそれは却下されたようだった。
箒を持って廊下を歩いている束穂を陸奥守が捕まえて「じゃがのう……」と言葉を続けようとした時、ちょうど角から加州が姿を見せた。
「なーに言ってんの。束穂はやることいーーっぱいあるんだから、その分ちゃんと働いてきなよ」
「ほがなこつわかっとるが」
陸奥守が言いたいことを加州もわかっているだろうが、はぐらかすようにそう言うと、ちょうど玄関先から長谷部が陸奥守を呼ぶ声が聞こえた。あわわ、と身を翻して「しもうた、いかなぁいかん」とバタバタ走っていく陸奥守の姿を見送って、束穂と加州はくすくすと笑った。
「加州さんありがとうございます」
「いーよいいよ。別に。ま、言いたいこともわかるけどね。なんかあれなんでしょ。文明の利器ってものを見てくるのに、自分達より束穂の方が詳しいだろうって思うの当然だし」
「はい。そうだと思います」
「でも、ここ離れちゃ駄目なんでしょ。そういや、最初の頃は来た刀みんなに言ってたけど、最近は説明してなかったかも。今度改めて言っとく」
加州は審神者にとって初めての刀で近侍だ。多くを知らなくとも、ただ束穂が本丸を離れることが出来ない、ということを審神者からよく聞かされていた。
束穂はその加州の気遣いにもう一度礼を言い、頭を下げる。
と、加州の指先、いつも美しくマニキュアを塗っている爪が目に入った。
/ 160ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp