第1章 守護者の日常
審神者は朝食後、出陣する刀達と共に時代を遡り、彼らを見送って戻ってくる。
審神者がいる場所が彼らにとって「戻る場所」であるため、時間を移動する力を彼ら自身が持たなくとも、審神者の存在が彼らの道標となるからだ。
勿論、前述のように、たとえば連日複数部隊で同じ時代に出陣する必要がある……など厳しい自体があれば、本丸は移し身をおいたまま、本丸そのものも時代を遡って移動することが出来るのだが、それはまたおいておこう。
「もうすぐ梅雨だろう」
「はい」
午前の日課、審神者の部屋に言った束穂は、審神者からあれこれと世間話をしばらくされる。
午前中は緑茶が良い、午後は紅茶が良い、眠る前はルイボスティーな、とわけのわからないところでうるさい男だが、束穂にとっては命の恩人だし、穏やかな気質はいつでも変わらず心地よい。
「わたしはよくわからないんだけど、梅雨になったら洗濯物が干せないだろう?どうしたらいいんだ?」
「乾燥機を二台ほどと、布団用の乾燥機も各部屋分ご購入すればよいかと」
悲しいかな、2205年になっても文明は今とそれほど変わりがない。人類は文明を早く進化させすぎ、ここ200年ほど止まったままだ。
「かなり暑くなるって聞いたんだけど、どこに置こうか」
「そうですね。洗濯機の近くが良いですよね」
「やっぱりそうか……」
審神者は手元にあるタブレット――和室にまったく似つかわしくないのだが――であれこれ検索をして束穂に見せる。
「こんな?」
「そうそう。そんな」
手際よく束穂がイメージした通りの乾燥機をネットで調べてはあれこれぶつぶつと呟く審神者。
「じゃあ、注文はネットでするからいいけど、店頭で色々聞いて来るか……今日の非番と……あと、電化製品が好きなのは……長谷部と陸奥守連れて行くかな」
「いい人選だと思います」
「じゃ、今日は出かけるから、刀達がちゃんと戻ってこられるように玄関に印つけをしていくよ。よろしく」
「はい」