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【刀剣乱舞】守護者の恋

第8章 本丸の最期


現代に戻った束穂はすぐさまプロジェクトの上層部と通信で報告を行い、今後の指示を仰いだ。上層部の返答は明確だった。審神者を失った状態で三日月がどれほど「もつ」のかを引き続き確認をしたい。そのまま現状維持で、と。
「手入れをどうにかすることは出来ないのですか」
答えは冷徹なNOひとつ。
「それが出来るならば、審神者は顕現のみに特化してもらえば良いのだが、それが出来ないからこそ貴重」
時代を遡ることは審神者以外でも出来るものもいれば、既にそれが可能な文明の利器も出現している。だから、あとは付喪神として存在する彼らの手入れも他人が出来れば、審神者は付喪神として刀を呼ぶだけの存在で済む……とまでは物事は容易にいかない。
結局現時点で刀達は審神者と運命を共にするか、正しい形で審神者より魂をもとの鞘、ならぬもとの刀身に戻るかしかその道を選べない。
それは束穂もわかっていたことなのだが……
(わたしにとって三日月さんは刀であっても人と同じだけれど、上の人たちにとってはただの刀なのだろう)
だから、痛みがわからない。
いや、わかるとしても、他人事でありあくまでも実験のモルモットのようなものなのだろう。

自分が間違っていたのだろうか。
いや、間違っていない。間違うも何も、他に選択肢はなかったのだ。

手に入れた鎮痛剤を三日月に飲ませ、ようやく彼は静かに寝入る事ができたようだった。
寝ても体の傷は癒えないけれど、その間は苦痛から開放される。それだけが束穂にとってはありがたいことだった。
束穂は、いつ上層部に棺を引き取りに来られても良いように、棺に納め忘れたものがないのか、主がいなくなった審神者の部屋を整理して。
(……あ)
目眩がする、と思った瞬間、目の前が真っ暗になる。
三日月に言った「限界」はあの時半分は口からのでまかせだったけれど、もう半分ぐらいは真実だったのだとようやく束穂本人も理解をした。
自分のせいで審神者が死んでしまった。その事実を受け止めるストレスと、審神者の遺言に従わなければというプレッシャー、そして、小狐丸、石切丸との無情な別れへの悲しみに、三日月を襲う苦痛を思っての胸の痛み。
そのどれもを耐えようと気丈に振る舞ってきたけれど、束穂にとっても限界だったのだ。
力ではなく、心の。
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