第1章 守護者の日常
「ふー」
慌ただしく朝食の準備を終えると、束穂もお勝手口から台所を出る。
本丸の裏にある離れに行く前に、刀達が丹精込めて育てている野菜畑を覗き、今日の夕食に何を使えるかを確認。これもまた日課だ。夕食に畑の野菜をどれぐらい使うかを台所前に用意してある小さなホワイトボードに書いておけば、畑当番がそれをチェックして午後収穫してくれることになっている。
(次郎さんと短刀、宗三さんと短刀が遠征。遠征部隊の帰還予定時間を確認して……陽が高いうちだったら、宗三さんが好きな、ちょっと綺麗な和菓子を用意しておこう)
一度離れに戻って、束穂は自分の朝食をとる。
食事ぐらいは頭巾をとって、割烹着も脱ぎ捨て、ゆっくりと自分のペースで食べたい。というか、実はなにげに朝はシリアルに果物、というのが彼女の最近のお気に入りで、とてもではないが本丸の彼らと共に食べられるものではないのだ。
離れは小さな垣根で囲ってあり、大きな屋敷の敷地に更に小さな家がある、そんな雰囲気がある。2階はなくただの平屋だが小さな風呂に厠に小さな厨房もついており快適な環境だ。
朝食を食べてしばし休むと、その間で本丸では給仕係が皿洗いをして台所を片付けている。それが終わる頃に束穂も本丸に戻って、台所を更に綺麗にした後、各所の清掃を行う。
非番の刀はそれぞれ清掃分担があるが、彼らがの分担外の場所を束穂は受け持っている。午前中には必ず一度審神者へ挨拶に言ってついでに審神者の部屋掃除。
それが終わる頃には洗濯物が決まった場所に集まっているだろうから洗濯。そして昼飯を作る。
長谷部や蜻蛉切がいれば、あっという間に午前中に布団干しまで勝手にしてくれることがある。布団周りについてはさすがに30人分手がまわらないため、綺麗なリネン類を所定の場所に入れ替えをするだけで精一杯だ。
最初は刀達は布団に対して「よくわからないもの」と認識をしていたようだったが、干すと気持ちが良い、枕カバーなどを交換すると気持ちが良い、というとても単純な「気持ちが良い」に「何故そうするか」を審神者が説明をしたことで、自分達から積極的に整備をしてくれるようになった。ありがたい。まったくありがたい。
束穂の仕事はとにかく朝から晩まで沢山あって、正直追いつかないぐらいなのだ。