第1章 守護者の日常
「今日は短刀は秋田さんだけなんですね」
「はい、そうなんです。昨日出陣したので今日はお休みをいただいていて」
「今日は少し短刀を鍛えるって主様言っててね、他の短刀ほとんど出陣なんだって」
秋田も安定も、口は動いても手はテキパキと止まらない。
「次郎太刀が引率してくってさ」
そう安定が言うと、燭台切が小さく笑いながら話に加わった。
「打ち漏らしを全部片付けるつもりだろう」
「でも薬研も一緒なんでしょ。言うほど打ち漏らしは多くない気がする」
「そうかもね。他に遠征にも短刀をいくらか出すらしいから、今日は短刀が本丸には少ないかもしれないな」
「宗三が連れてくって聞いたけど大丈夫なのかな?」
「ああ見えて結構面倒みが良いんだよ、彼は」
「ああ見えてって」
安定が苦笑いを燭台切に返したところで、秋田が
「1台、運んで来ますね」
と朗らかに言う。
1台の台車に御膳は10人分。秋田が「よいしょ」と押していこうとすると、山姥切が「2人で行く方が良い」とぽつりと呟いて台所を共に出て行く。
束穂はそんな刀達のやりとりを聞きながら人数分盛り付けをしていく。台車が2往復半したところで、最後に残った五穀米をおひつに移す。
「今日は一杯ずつのよそいが少なめだったのか、おひつに結構入っています。重いので……」
「うん。僕が持っていくよ」
燭台切さんにお願いしても良いでしょうか。
そう続ける前に、察して本人が重たいおひつを抱きかかえた。
「米は山姥切が盛ってたけど、確かに控えめだったかも。確かにいつもより重いかな」
「ありがとうございます。お皿をよろしくお願いいたします。では、またお昼に」
そう言って束穂は深々と頭を下げた。「じゃあまたね」と燭台切と安定は軽く挨拶をして、3回目に大広間に台車を運んでいった秋田達を追いかけて台所を出て行った。