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【刀剣乱舞】守護者の恋

第5章 秘密の欠片


束穂の力。それが一体どういう力なのか、聞いてもあまり理解出来ないだろうと長谷部も燭台切も共に思う。
が、なんにせよ彼女が特別な人間だということだけは理解をしたようだった。
「昔、わたしはその力を利用しようとする、多くの、よくない人達から追われていました。だから、わたしがここにいるとわかれば狙われることもあるでしょうし、ここが特殊な場所だと詮索される可能性もあります」
「成程」
「空間を……この場所を安定させるために、ここから出来るだけ離れないほうが良いのと、みつかりたくないためわたしはここから出ないで、顔も隠して生活をした方が良いんです」
そう言って束穂は僅かに微笑んだ。が、その微笑みは二人を安堵させられるようなものではなく、物静かだけれどどこか悲しい、自分に言い聞かせようとしているせつない表情に見える。
「それは、俺達に話して良いことだったのか。主はご存知なんだろう?」
「はい。わたしさえ良ければ、と言われていました。わたしはただ……」
一瞬言葉を途絶えさせ、それから思い切って束穂は言い放った。
「自分が力を持っているなんてことを人に言うのが得意ではないのと……このことを知っている人間が少ないほうが外部に漏れにくいと思って黙っていました。でも、それはみなさんを信じていないという意味にも繋がるって、今気付きました。だから、失礼だったと思い、打ち明けました」

燭台切と長谷部は、秘密を口にした束穂に礼と謝罪を告げ、しばらく月を眺めてから部屋に戻っていった。
障子を閉めて部屋の奥に戻ると、ごそごそと毛布に入る束穂。
(言ってしまった)
後悔はない。
いつかは言うこともあると予測していた。
だが、自分が打ち明ける前に、長谷部はいくつもの「みなが勘ぐっている」内容を口にしていた。その中には過去に他の刀と会っているのでは、という推測があった。
それについてはまったく口にしなかったし、二人もあえて追求をしなかったけれど、否定をしなかった自分のことを二人はどう思っただろうか。
(みんなに、そう思われてしまった。バレるのも時間の問題か)
晒してもあまり痛くない、自分に都合が良い部分だけを提示して、二人に理解を無理矢理求めた。ずるいと思う。きっと、審神者が聞いていれば「仕方ないよな」と言いながらも困った笑みを見せるに違いない。
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