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【刀剣乱舞】守護者の恋

第4章 近づく距離(2)


普段審神者がいる部屋には、束穂が眠るための毛布が一枚と枕がひとつ。障子をそっと開けば、すぐ前は縁側になっており、庭が一望出来る。
「今日の月明かりは明るいな。この明るさを見てしまっては、眠れるか心配になってしまうよ」
縁側に出て、上弦の月をみながら燭台切が呟く。今から満月に徐々になろうとしている月は、ふっくらとしている。
「……あ」
と、その時縁側の先、廊下の角から長谷部が歩いてくる姿が見えた。
「どうした。何かあったのか」
成程、燭台切が部屋にいなかったため、審神者に何かがあったのかと駆けつけたようだ。
「ごめん、長谷部くん」
そうじゃないんだ、と慌てて近寄って説明をする燭台切。
「なんだ。人騒がせな」
「悪かったね。寝よう」
「そうだな……」
長谷部は、部屋の障子から顔を覗かせている束穂に
「眠れそうか」
と声をかける。
「そうですね。今は様子が静かですし、眠れると思います。ただ、燭台切さんもおっしゃってましたが、月明かりが少し眩しくて」
もともと寝室ではない部屋で眠るのだから仕方がないが、障子を通して夜にしては明るい光が差し込むようだ。
「雨戸を閉めれば良いのだろうが、暗くなりすぎるか」
「そうですね……折角なので、もう少し夜の庭を眺めてから眠ることにします。お二人ともありがとうございます」
「それは僕がお付き合いしても邪魔ではないかな」
とは燭台切。その言葉を聞き、束穂ではなく長谷部が眉根を潜めた。
「我らは不測の事態に備えて寝なければいけないだろう」
「だって、明日になったらまた束穂は顔を隠すんだろう?だったら、あともう少し、なんて思ってもばちは当たらないんじゃないかな」
「わたしの顔なんて」
束穂は慌てて、今更ながら何かをかぶろうと部屋の中を見回した。だが、審神者の額を冷やすための手ぬぐいや汗を拭くためのタオルといった、用途が決まっているものしかそこにはない。
その様子を気にも留めないように、長谷部はどっかりと縁側に座り込んだ。
「束穂にも事情があるのだろうから、はっきりと言っておく。みな、束穂のことを勘ぐっている。加州あたりから聞くだろうが……」
「長谷部くん」
「今日顔を見せても、また明日から隠す意味とか。詮索をしてはいけないと思いつつ、考えてしまうものだ」
「そう、でしょうね」
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