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【刀剣乱舞】守護者の恋

第4章 近づく距離(2)


「それって、束穂が他の刀を知ってるっていう……?」
安定がそう言うと同時に、陸奥守がきっぱりと告げた。
「束穂は、しっちゅうよ」
「え?」
その言葉にみなが不思議そうな視線を向ければ、蜂須賀が頷く。彼もまたこの本丸にかなり早いうちにやってきていた抜刀だからか、話を引き継いだ。
「多分、彼女は我々以外の刀と生活をしたことがあると思う。人の姿になった我らが、何に戸惑い、生活をするにあたって何から知るべきかを、主よりもよく知っている風だった」
その言葉に加州は眉根を潜めた。それを長谷部は見逃さない。
「加州」
「ああ、やだやだ。言いたくないよ」
「何か知ってるんだな」
室内のみなからの視線に、加州は「まいった」と言いたげに小さく息を吐き出し、畳の目をみながらぽそりと言い放った。
「多分、彼女は他の本丸を知ってる」
「他の本丸……?」
その響きに一同は静まり返る。一体それがどういう意味なのかを測りかねているのだ。
「一度だけ……二人の会話を聞いちゃって」
加州が言う「二人」とは、審神者と束穂のことだ。
「太刀と大太刀しか知らないので、短刀のみなさんに戸惑っています」
「……!」
一同はその言葉にぴくりと反応をした。
「聞かないふりをしてきたけど、多分さ、そういうことでしょ……すごくない?太刀と大太刀しか知らないってさ」
太刀、大太刀や槍などの魂は、今彼らが主としている審神者でもなかなか鍛刀で呼び寄せることや、出陣の道中に感知することが出来ない。
だからこそ、先日一期一振が来た時は粟田口の刀達はそれはもう大喜びであったが、審神者も「他の太刀も少しずつでも探せると良いね」と安堵をしたと言う。
「主のような力がある者が他にいるということか」
とは長谷部。
「だね。大太刀やら太刀がどうのというのは相性みたいなものもあるかもしれないし、僕らがわかることではないよ」
燭台切が穏やかに言えば、みななんとなく「確かに」と納得はしたようだった。
「どうして彼女は今ここにいるんだろうね」
つい言わずにはいられない、という風に安定が口にする。
安定のその言葉は詮索というよりも、自分達がここにいて、他に本丸がある。それがどういう意味なのか、という不安が声になったようなものだ。ずっと先ほどの言葉を一人で抱えていた加州は、そのことをよくわかっていた。
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