第4章 近づく距離(2)
刀達からの視線を感じ、誰とも目を合わせないようにと視線を泳がせる。こんな風に沢山の人間――とは違うが――の前で話をすることには慣れていない。
「みなさんの主様は、最近力を使いすぎていたご様子です。普通の人間では、みなさんのように刀を付喪神として人の姿にすることは出来ません。特殊なお力を持つので、時折その力を使いすぎるとこのようになる場合があります。ですが、命に別状がないと以前からの検査で言われていますのでご安心ください」
束穂の言葉にあきらかにみなはほっと胸をなでおろし、安堵の表情を浮かべた。
「力を使いすぎたっていうのはなんだろう?」
と薬研がいうと、それへ加州が首をかしげながら言う。
「なんかここ最近、鍛刀多いんだけどそれかなあ」
「それに能力とか関係あるわけ?」
「わかんないけどさ……あと、遠征回数も増えたし、そういうの?」
何を言ってみてもそれらはすべて彼らの想像だ。
束穂はあえてそれには口を挟まず
「今晩、主様の寝室のお隣に泊まらせていただきます。夜中に台所と往復したりすると思うので、多少音がたちますがお許し下さい。えっと、それから、もしみなさんに何か声をかけなければいけない時はどうしたら?」
「ああ、はいはい。そしたらさ、あっちの部屋の一番手前で俺寝てるから」
近侍という立場もあって、加州が手を軽くあげる。
と、続いて「加州が起きなかったら俺も」「俺も」と一斉にいくつもの手があがった。
気持ちはわかるが、と協議の結果、いくつかある寝室の中、二部屋の手前に加州と薬研、長谷部と燭台切、という組み合わせで仮眠をしながら待機をすることに決まった。
「では、何かありましたらお声をかけますので。よろしくお願いいたします」
そう言って束穂は頭を下げて退出をして、審神者の部屋に戻って行った。