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【刀剣乱舞】守護者の恋

第3章 近づく距離


束穂を連れて長谷部が廊下を歩いていると、既に何が起きているのかを燭台切から聞いた刀達が不安げに部屋からひょっこり顔を出す。
「おい、長谷……」
部。
そう言いたかったに違いないが、御手杵の言葉はそこで途切れ、立ち止まった長谷部を気にもせず歩いて行く束穂の背中に視線が注がれる。
「……今、通ってたのって……おい……」
「束穂だ。我々では判断を出来ないから来てもらった」
「ちょ、ちょっと待て、おい」
すっかり混乱した御手杵の横から廊下を覗いていた青江が
「緊急事態に、ようやくお姫様が御簾から顔を覗かせたってわけだね」
と呑気に言う。長谷部は「ああ」と軽く答えてから束穂の後を追いかけた。
「青江、顔見たか?」
「いや、よく見えなかったよ。なんにせよ顔を露わにしてくれただけでも素敵なことじゃないか。歌仙あたりが歌でも詠んでくれるんじゃないかな?」
「歌を詠んだからって何になるんだ?」
「心が動けば、ずっと顔を見せてくれる?とかね」
「あー」
そうか。今顔を見せたからといって今後ずっとそうするわけではないのか……と、御手杵は肩をすくめた。
そっと障子を閉めてから、あまり騒いではいけないと部屋の奥で固まっている仲間たちに小声で告げる。
「束穂、頭巾脱いでた」
「「「ええええええ!」」」
「しーーーっ」
青江が人差し指を唇の前にまっすぐたて、皆を諌める。
「ちゃんとは見えなかったけどね。急いで来てくれたんだろう」
その青江の言葉にみなは静かになった。
「じゃあ、あんた達何も見ていないと。そういうことにするのが、良いってことだね」
次郎太刀のその言葉に鳴狐がこくりと頷く。だが、青江と御手杵の反応はバラバラだった。
「そうだね。束穂がそれを望むのなら、それで良いかな」
「見た事実には変わりがないから誰かはずるいって言い出すだろ?」
それへは、一期一振の隣に座っていた鯰尾が「だからって駄目」と言い伏せる。
「俺達がどうあれ、いつも頑張ってくれてる彼女に敬意を払うのは当然のことでしょう」
「とか言うけど、お前も見たいんじゃないのか」
「そりゃ見たいよ。でも、それとこれとは別!」
御手杵は青江にそっと「やっぱ、歌仙に歌でも詠ませて本人の気を変えるのが一番丸く収まるんじゃないか」なんて言い、青江に「交渉は自分でどうぞ」と軽く笑われた。
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