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【刀剣乱舞】守護者の恋

第3章 近づく距離


離れに長谷部が向かう姿を数人がみつけて「どうしたんだ」と声をかけてきたが、いちいち説明をしている時間が惜しい。「後で」と軽くそれをかわして、長谷部は束穂が寝泊まりしている離れについた。
こうやって彼らが束穂を呼びにくることは普段まったくない。時折あっても、それは昼間で束穂が離れの前を掃除していることがほとんどのため、改めて訪問をした記憶が長谷部にはなかった。
(呼び鈴も何もないか)
無作法ではあったが直接玄関を開けようと手をかけると、鍵は開いていた。その家屋はもともと鍵などついていないのだが、長谷部がそれを知るわけもない。
「束穂いるか!?へし切長谷部だ!」
玄関先から叫べば、すぐ側の部屋からカタンと小さな音がする。
「い、います!少し、少し待って……」
「主が倒れた!体がとにかく熱く苦しそうな様子、しかも声をかけてもまったく意識が戻らないんだ!我々ではどうして良いかわからない。来てくれないか!」
「ええっ!?」
それまで少し待ってと言っていた束穂だったが、長谷部の言葉を聞いて余程驚いたようだ。玄関に近い部屋の障子がパアンッと音を立てて開かれる。
「行きます」
「……おい……」
現れた束穂は相当現代風で、Tシャツ一枚にショートパンツという出で立ち。そこに頭巾、というとんでもない状態だった。
本当ならば心情的にそれに突っ込んでいる場合ではないのだが、さすがに黙っているのも無理だった。
「おかしいだろう、それは……」
「わかってます。わかってますけど……ああ、駄目だ、やっぱり無理……無念です……!!」
束穂は忌々しそうにそう言って、玄関でサンダルをはいてから頭巾を荒っぽく脱いだ。
「お風呂からあがったばかりだったので……」
髪を乾かし終わってなかったため、慌ててクリップで結い上げ首にタオルを巻き、その上から頭巾を被ったのだが、熱気と水滴のせいでどうにも我慢がならなくなった。
「こんな形で顔を見せることになるとは本当に悔しいですが、呑気に髪をかわかしている場合ではありませんものね」
本当はTシャツにパンツ一丁というとんでもない姿だったのを、どうにか無理矢理ショートパンツを履いたのだが当然長谷部はそれを知らない。
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