第2章 守護者の秘密
「束穂さん」
茶器を片付け、午前中に終える予定の掃除に取り掛かろうと台所から出たところ、宗三と歌仙に出くわした。
「は、はい」
ああ、そういれば彼らは畑当番だったような気がする、と思い出す束穂。
「御用ですか」
「畑の豆類を鳥が食べていくようで、網で囲おうという話になったのですが」
宗三のその言葉を聞いて、束穂は一瞬笑いそうになった。彼の口からそんなあまりにも具体的現実的な言葉が出るのが似合わなかったからだ。
「先日からその話は出ていたのだけどね。それで、畑仕事に熱心な光忠や陸奥守とも相談して様子を見ようと思っていたが被害が大きくなって」
「そうなんですか」
「今から主と一緒に網を、なんといったかな。えーっと?」
歌仙が顔をしかめると、宗三が
「ほうむせんた、というところへ行くと」
ホームセンター。
慣れぬ言葉を口にする宗三と、慣れぬ言葉を思い出せない歌仙のどちらもおもしろくて頭巾の下でつい薄く笑ってしまう束穂。
「いつも通り主が、みながここに帰還出来るようきちんと印をつけていくとおっしゃっていました」
「それから、昼食に間に合うかわからないので三人分いらないと言っていたよ」
審神者の部屋から台所に戻って片付けている間にそんな話も片付けるなんて、審神者も大変なものだ、と内心思う束穂。
「わかりました。いってらっしゃいませ」
そう頭を下げると二人はさっさとその場を離れていった。
刀の中でも打刀、太刀あたりの刀達は、本丸での生活に関することにこうやってよく動き回っている。短刀は体が子供であるし、脇差もなんだか中学生や高校生のような雰囲気があって生活を回すことに興味があまりなさそうに感じる。
宗三がぶつぶつと「あまり外に出るのは好きではないのですが」と愚痴めいたことを言う声が最後に聞こえた。
(……あ)
不意に思い出す。
(そっか。もしかしたら)
粟田口の短刀達が一期一振と「おでかけ」をしたいように、小夜も宗三と「おでかけ」をしたいのではないだろうか。いや、おでかけに限ったことではなく、もしかして。
(宗三さんと一緒にゆっくりしたい、とか。そういう気持ちが小夜さんにあってもおかしくない)
頑張った子達にご褒美を、なんてことを言っていたらしいが、いつも刀達はみんな頑張っている。勿論審神者はそれを知っているだろうが。
