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【刀剣乱舞】守護者の恋

第2章 守護者の秘密


「失礼しますね」
そう言ってみなが飲んだ茶器を盆に戻す束穂。それへ、呑気な口調で審神者は世間話のように語りかけた。
「本当に楽しみにしていたんだなあ、粟田口の子達は」
「そのようですね」
「同じ人物に作られたとはいえ、一緒にいたわけでなくとも兄弟分と感じ取れるものなのかな」
「さあ……わたしはみなさんが刀としてどんな主のもとにどれだけの時間いたとか、そういうことを存じませんし、なんとも」
「そうだな……兄弟分ではなくとも共にいた刀とは、それはそれで様々な関係であったように見えるが。彼らの記憶は本当に人間に近くて……それを失っている骨喰も、記憶が無いことをもどかしさや悲しみを感じているようだ。人と変わりがないことは嬉しくもあり悲しくも」
審神者の湯呑茶碗に束穂が手をのばすと、そっと掌でそれを遮り「もう一杯」と声に出さず指先で審神者は意思表示をした。
「新しく淹れ直しますね」
束穂は持ってきた盆の上の茶殻入れに茶葉を捨て、茶葉を新しく急須にいれた。その様子を眺めながら審神者は話を続ける。
「刀達はさておき……君はどうなのかな?」
「なんでしょう?」
「誰か、待っているのかい」
「……いいえ」
「まだ誰も来ていないんだろう。君が、過去に既に出会ったことがある刀は」
その言葉に束穂は僅かに体を震わせた。だが、それ以上の焦りを見せたくない、と小さく息をつく。
必死に動揺を隠しつつ湯を急須に注いで、束穂はそれに目を落とす。頭巾で顔を隠していても、瞳は見えており、視線を合わせてこの会話をしたくない、と思ったのだ。
「こんなことを言えば、骨喰さんに怒られるかもしれませんが」
「うん」
「もし、わたしと共にいた刀がここに来たとしても、その時の記憶なんてない方が良いと思っているんです」
骨喰は刀としての記憶すら失っており、一期一振が来てもあまり心が動いていないように見える。そんな彼は多くを皆には言わないけれど、過去の記憶を思い出したいと感じる時もあるように見受けられる。だから、束穂はつい彼の名を出した。
きっと骨喰が聞けば「人を引き合いに出さないで欲しい」と言うだろうが。
「でも、束穂は覚えているだろう。忘れろと言うのは覚えている人間の身勝手だし、思い出せと言うのも覚えている人間の身勝手だ」
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