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【刀剣乱舞】守護者の恋

第2章 守護者の秘密


それから半刻過ぎ。
束穂は、出陣部隊と遠征部隊の見送りをしてきた審神者に茶を五人分所望され、部屋を訪れた。
「失礼します」
ふすまを開けると、審神者だけでなくそこには加州清光と一期一振、薬研藤四郎が並んでいる。
「後からもうお一方いらっしゃるのでしょうか?」
と審神者に聞けば
「いや、束穂をいれて五人分だ」
「わたし……ですか?」
「まあ、とにかくどうぞどうぞ」
どうぞどうぞ、なんて言葉で審神者の部屋に招き入れられたことはない。いつもと勝手が違う状態に戸惑いつつ束穂は部屋に入り、ひとまず全員分の茶を淹れた。
「わたしはこれで下がってはいけないのでしょうか」
「うん。ちょっと頼みがあって」
「はい」
「今日から数日、脇差や短刀達がちょっと張り切っちゃうと思うんだよね。脇差はともかく短刀が少し心配で」
「……?」
「元気が出る感じの夕食を用意してくれると助かるんだ。いや、いつも疲れが取れやすい食材を使ってくれているのは知ってるんだけど、そういうことだけじゃなくて」
なるほど。体つきのせいなのか、一部の短刀は相当「子供の味覚」だ。疲れて帰ってきて、苦手な食材が夕食に使われていたらしょげてしまうに違いない。
むしろ、そんなことを心配するなんて、彼らは本当に人間の体に慣れてしまったのだなあと思わなくもないが……。
「脇差や短刀のみなさんが遠征に行かれてるのは、一期一振さんと何か関係が?」
束穂がそう尋ねると、一期一振はかすかに困ったように笑い、加州は「そーいうこと」薬研は「大将にしては、考えた方だと思うんだけどな」と言って笑う。
一体何のことやらまだ話がわからず束穂が首を傾げると
「みんな一期一振が好きすぎて、構いすぎたり構ってもらいたすぎてね。ここでの生活に慣れる以前にさすがに一期一振も疲れるだろうなっていうことで」
そう言って肩をすくめてみせる審神者。
「みんな一にぃのこと待ってたからなぁ。そんなわけで大将がちょっと知恵を貸してくれてさ。遠征で頑張ったら俺っち達兄弟は次の休みに一にぃと一緒に買物に行けるっていうにんじんを鼻先にぶら下げて、他の脇差短刀達にも頑張ったら褒美をやるっていう話にしてくれて」
「わたしは人参か」
品の良い顔立ちで苦笑いを見せる一期一振。加州は「そういうこと」と身も蓋もなく断言した。
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