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【刀剣乱舞】守護者の恋

第19章 改変の傷(2)


どうにか、自分達の「いつも通り」を演じ通して離れに戻った束穂は、部屋に飛び込むやいなや、灯りもつけずに畳の上で丸くなった。
色んな感情がないまぜになって、どうして良いかわからない。

やってしまった。恥ずかしい。
あんな風に長谷部さんの腕の中にいたなんて思い出しただけでおかしくなりそうだ。
嫌だ。恥ずかしい。ほんの少しだけど彼に体重をかけていた。重くなかっただろうか。
みなさんのように造作が整ってるわけでもない上に重いなんて思われたらどうしたら。
そうだ。長谷部さんときちんと話が出来た。もう諦めかけていたのに。
少しでも彼に審神者の気持ちが伝わったのなら嬉しい。
薬研さんと乱さんは大丈夫だろうか。きっと明日なんらかの話が来るに違いない。
そうだ。明日は石切丸さんと会わなくちゃ。
なんだか、彼にまだ、手首を掴まれているような、気がする。
まだ、彼に、赤い顔を見られているような。

ぐるぐると回る気持ちを落ち着けようと起きあがり、まず部屋を明るくする。それから、彼女にしてはかなり大げさな音を立てながら茶を淹れた。
平静に戻るには、いつも通りの行動が一番だ。
それから、茶を一口二口飲んで時計を見れば、思ったよりも時間が経過していて驚く。
「早く眠らないと、朝起きられなく……」
日々自分のことは相当適当にしてはいるが、束穂も一応それなりの年頃で、眠るまでの日課はそれなりにある。
「いつもやっていること」をじたばたとやっていれば、ほんの少し落ち着きも戻ってきて、結局布団に入ったのは、いつもより一時間遅れてのことだった。

布団に入って意識を閉ざそうと思えば思うほど、長谷部と共にいた時間のことが脳裏に浮かんでくる。
それらが思ったより鮮明だと気付き、これはなかなか眠れないかもしれない、と観念をする束穂。
(ほんと、長谷部さんって……)
長谷部が束穂に伝えに来たことを改めて考えると「だから、そういうことだって言ってたじゃないですか!」と今更過ぎる話だったなあ、とちょっと笑いそうになる。
どうしてあの人はあんなに遠回りなんだろう。
束穂はそこで静かに瞳を開けた。
じっと暗闇を見ていれば少しだけ目が慣れる。自分が良く知っている室内でも、家具などの輪郭はぼんやりとしか見えない。
見えないけれど見えている、知っているのに見えないもの達。
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