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【刀剣乱舞】守護者の恋

第18章 改変の傷


悲しいのかどうか?悲しいに決まっている。
どうしてこの人はこんなことを言うんだろう。
束穂は呆然と立ち尽くした。
そんなことを確認して、一体何になるのかと苛立ちもわずかに生まれる。
(……落ち着かなくちゃ。違う。長谷部さんは、長谷部さんは、本当に、わかっていないんだから)
自分が感じる悲しみや心の痛みに、彼は「何故だ」といつも問いかける。そして、それを説明して彼が理解をしたためしはほとんどない。
だから、彼はわからないから聞かなければいけないのだ。
そう言い聞かせて平静を保とうとする束穂。
「泣かないと、決めました。なのに、どうして長谷部さんは」
「うん?」
今の気持ちを口に出せば泣いてしまいそうだ。長谷部にはそんなつもりはないだろうが、まるで意地悪をされているようにすら思えてしまう。
落ち着け、落ち着け、と束穂は必死に自制しようとした。
「泣かないと決めたということは、泣きそうということだな」
だから、どうしてそういう言い方をするのか。
束穂の体温は、かあっとあがっていく。
早くこの場のこの問答から逃げたい。
折角久しぶりに話が出来たと思えば、また理解しあえない話をしようとするなんて。
そんな感情的になりそうな自分を、束穂はひたすら抑制しようと必死だ。
が、そんな彼女がまったく予測できなかった言葉を長谷部は続けた。
「小狐丸にも聞いた」
「何をですか?」
「悲しいかどうかを」
「えっ……」
どきん、と束穂の心臓が大きく鼓動を打つ。
(どうしよう。もし、小狐丸さんが悲しくないと断言したら。長谷部さんは、やっぱりわたしがおかしいのだと思うに違いない……)
ぎゅ、と無意識で胸元を強く掴む束穂。
いや、そうではない、もしそうだったら、長谷部は「やはり刀と人は違う」とあっさり思うに違いない。いや、でも、だけど。
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