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【刀剣乱舞】守護者の恋

第18章 改変の傷


ああ、綺麗な月だ。
そういえば、石切丸さんと、月について話をしたことがあった……。
そんなことを思い出しながら、束穂は夕食後に離れから出て、庭を歩いていた。
最近は少し思い悩むことがあると、よく庭に足を運ぶ。
夜はよくないことを考えてしまうから、離れで一人でいると悪いことを想像してしまう。
夜の庭を歩けば昼間と違う風情を楽しめるし、昼気づかなかった植物の状態に気付くこともある。夜の虫の声もいいし、空気がまず違う。
同じぐらいの年頃の女の子は友達と遊んでいたり、趣味に没頭したり、だらだらと動画サイト等を見て笑っている時間なのだろうが、束穂にはそのどれもがない。
結局今日のうちに石切丸と言葉を交わすことが怖く、厨房で仕事を終えたらさっさと離れに戻ってしまった。自分は逃げたのだ、とはっきりとわかっている。
明日はきちんと話をしよう。はじめましてとは言いたくないから、あなたを知っているとはっきりと言おう。自分に暗示をかけるようにそればかりを心の中で繰り返す。
それ以外のことは考えないようにと心に蓋をしつつ、庭に置いてある大き目の石に座って月を見上げる。
と、しんと静まり返っている建屋側から人の気配を感じ、束穂はそちらに目線を送った。
「……」
あれは。
ばくん、と心臓が突然大きな音をたてた。どうしてそんなに驚いたのか自分でもわからないけれど、急に体中に一気に血液が押し出されたような感覚。
まだ夜でも開け放たれている縁側――冬が近づけばガラス戸を閉め雪が降れば更に外側を閉めるのだが――を歩いているのは長谷部だ。
夜、庭に出て刀達に会うことはほとんどない。束穂の方が眠る時刻は早いけれど、彼らの寝室はその縁側からは離れているし、比較的審神者の部屋側だからみなは気を使って特に夜は訪れない。
最後に夜の庭で会ったのは束穂が倒れた夜、小狐丸とであれはまた話が違う。
どうしよう、気付かれないうちに隠れようか。
そんなことを思った瞬間、縁側を歩いていた長谷部が明らかにこちらを向き、庭に降りてくる姿が見えた。
「束穂」
「……っ……」
いるとわかっていて庭に降りたのか。
束穂は石から立ち上がり
「こんばんは。こんな時間にどうなさったのですか」
平静を装って返事をする。
「お前がここにいると思ったから来た」
「えっ……」
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