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【刀剣乱舞】守護者の恋

第18章 改変の傷


さて、それからおよそ三刻後のこと。
「おお、石切丸、いや、違った、初めましてと言うべきでありましたな」
と、審神者を見て言う小狐丸。
仕方なさそうに「ああ、うん」と頷く審神者と、苦笑いの石切丸の前で、小狐丸ははたはたと尻尾を動かした。
「すまないね。小狐丸とは旧知の仲のはずなのに、色々と記憶が抜け落ちていて」
苦笑いを浮かべる石切丸。
そもそも以前の本丸の記憶がないということは、彼にとってはこれが初顕現。
何もかもが初めてのことで、この三刻の間あれこれと情報を詰め込まれて少々疲れも見える。
「いやいや、記憶がなくともそれぞれの性質が変わるわけもなく。また共に言葉を交わせるのは嬉しいこと」
遠征から戻ってきた部隊と戦から戻ってきた部隊へ、夕食前に石切丸の面通しが行われた。
三条の刀が来たとあって今剣は「いわとーしよりちいさいけれど、とてもおおきいです!」と喜び、同田貫は「そのまんまじゃねえか」と呆れ顔を見せる。
「ぬしさま、ところで、束穂は?」
石切丸が他の部隊員と挨拶を交わす中、そっと審神者に小狐丸が声をかける。
「まだ、しっかり挨拶はさせていないんだ。さすがに……ショックだったらしくて」
それに、夕食の支度もあったしね、と付け加えたが、それはあまり意味がないことだとお互い知っている。
「そうでしょうなあ……特に石切丸は束穂を……咲弥をとても可愛がっていたので」
「そうなのか」
「うむ、可愛がっていたというのは少し言葉が違う。そう、気にしていた。うん。気にかけていたと申しますか。わたし達二人(三日月のこと)は当時の主様に心酔しきっておりまして……とても体が弱かったので、ついつい始終気にしてしまい。申し訳ないことながら、咲弥のことは何かと後回しになっていたのだと……こちらに来て、反省をしておりました」
「いや、それは。多分、彼女がああいう人だから仕方がないことだな。わかるよ」
「まことに、恥ずべきことと」
審神者の慰めを受け入れぬように、小狐丸はそう言って目を細めた。
と、二人の会話が途絶えたのを見計らっていたのか、後ろから長谷部が声をかけてくる。
「小狐丸。刀装をこちらへ」
「おお、そうであった」
今日、長谷部と小狐丸は同部隊での出陣だった。長谷部はいつも通りまめに刀装を戻そうと、小狐丸から回収しに近づいただけだ。それだけだったのだが……。
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