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【刀剣乱舞】守護者の恋

第17章 長谷部の選択2


「束穂おはようーー」
「おはようございます」
それから数日後。まだ歴史改変の影響は観測出来たが、彼らの生活は以前のものにすっかり戻った。
束穂は、早い時刻に起床し、朝食を作り。
昼間は洗濯や掃除をして再び本丸で忙しい日々が始まった。
以前と少し変わったことがある。刀達が前より掃除をするエリアを広げてくれたこと、畑の食材を見て、自分達から食事のリクエストをするようになったこと、などだ。
「すっかりまた頭巾かぶるようになったんだねえ」
食事当番で厨房に料理をとりにきた青江はそう言って束穂の顔を覗き込んだ。覗き込んでも頭巾の下の顔は見えないのだが。
「あ、はい」
「僕は居残り組で、一緒にお出かけできなかったからね。もう少し君の顔を見たかったけれど」
「申し訳ありません」
「生真面目な返事だね」
はは、と小さく青江が笑えば、汁椀を並べながら山姥切が珍しいことを口にする。
「顔を出している方が良い」
「はっ、それ、君が言うのかい!?」
青江はそう言ってまた笑ってから、もう一度束穂に向き直った。
「だけど、僕も賛成だね」
「申し訳ありません」
「勿論無理強いはしないけれど」
一度ワゴンで運び終えて戻ってきた小夜と宗三が、何を話していたのかを敏感に察知する。宗三は何も言わず、山姥切が用意した次のワゴンに手をかけたが、小夜は束穂の傍に近寄って
「また、そのうち外に行こう」
とぽつりと声をかけた。
束穂はもちろんのこと、その場にいた全員が彼の言葉に驚き、目と耳を疑う。
「あの、でも」
「外でなら、顔が見られるんだろ?」
「小夜。束穂を困らせてはいけませんよ」
それへ、やんわりと宗三が声をかければ、小夜は心底よくわからない、という顔で彼を見上げる。
「けれど、顔が見えた方が話しやすいから……」
「ふふ、そうですね。さ、次のワゴンを運びましょう」
宗三がとんとん、と小夜の肩をたたけば、小夜は「言いたいことは言えた」とばかりに素直に再び厨房を出ていく。
ありがたいことに、というか、ありがたくないことに、というか、あれ以来いろんな刀達に顔を出せと言われ続けている。が、そう言われることで逆に出しづらくなり、余計頑なになっているのだが、きっと彼らは気付いていないのだろう。
「では、後はよろしくお願いいたしますね」
「はーい!」
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