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【刀剣乱舞】守護者の恋

第17章 長谷部の選択2


時刻は20時半。
長谷部から報告を受けて直ぐ様やってきた審神者は「今度は逆だね」と小さく笑った。それは、以前審神者が倒れた時のことを言っているのだろう。
「布団に入ったままでいいよ」
「では、身体だけ起こさせてください」
「うん」
彼が言うには、どうやら束穂が追い払おうとしたあやかしは、思惑通りに本丸から退散していったのだという。といっても、その様子を感じ取っていたのは束穂と共にいた小狐丸だけで、他の誰もが深く眠りについていたとのこと。
「小狐丸から話を聞いて、すぐに現代に戻ってね。それから、上層部に報告をして歴史改変の観測データをもらって確認したところ、だいぶ改善されている様子なんだ」
「そうですか……」
「だからね。とりあえず束穂がみなについていくのは、このちょうどいいタイミングで終わりにしよう」
説明を受ける束穂は、まだ少しぼんやりとしている。先程の長谷部の言動がよくわからなく、頭に残っていることも影響しているようだ。
それを「元気がない」様子と勘違いしたのか、いつもにも増して審神者は明るい笑みを作って励まそうとしているように思える。
「みんなに伝えたら、早く束穂のご飯が食べたいと口々に言っていた」
「ふふ」
そう言ってもらえることは、リップサービスでも嬉しい。束穂は口端を緩めて小さく笑った。が、その笑みは即座に、まるでなかったかのように消える。
長谷部がこの部屋を出て行った後、慌てて一旦止めたはずの涙が再び外に溢れていく。言葉より何よりも、彼女の涙は雄弁だ。
「束穂」
「どうしてわたしは、うまくいかないんでしょう」
「よくやっているよ、君は」
「足りていません。何もかも足りてない。いつも大事な時にこうやって、自分が足りないせいで周りに迷惑をかけて……あんなに練習したのに、とか、あんなに考えたのに、と、そんなことばかり……」
「……ふはっ」
「!?」
悲しい話をしているのに、突然審神者は声をあげて笑った。
馬鹿にされたのかと思い、束穂は赤くなって声を震わせる。
「笑われる、ところですか」
「いや、ごめん、悪い悪い。あのね」
苦笑いを見せながら審神者が告げる言葉は、束穂が心底驚くべきものだった。
「さっき、ちょうど……長谷部も似たようなことを言っていたものだから、つい」
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