• テキストサイズ

【刀剣乱舞】守護者の恋

第17章 長谷部の選択2


遠くで声がする。

「なんで声かけてくんなかったの」

少しだけヒステリックになっている時の加州さんの声が、ぼんやりと聞こえる。

「あっという間の出来事だったゆえに」

それから、少し気落ちしている小狐丸さんの声。

「仕方ない。それにまあ、誰が斬れたかはわからないしね。小狐丸は切れないと思ったんだろう?」

「は。一人ずつ試せばきっと斬れる刀もおりましょうが、それまで束穂が苦しんでいると思えば、あれで良かったような気も」

「苦しんでなくても本人倒れてんじゃん!」

加州さん、小狐丸さんは悪くないのです。わたしが、少し意地を張ってしまって。

そう言いたいけれど、目が開かない。
金縛りにあったように体は動かない。

「山姥か青江が斬れるんじゃあないかと誰か言っていたねえ」

「大典太光などおらぬでしょうしね」

「あれはむしろ今いれば、束穂の枕元にでも」

「山姥切は山姥を切ってるだけでしょ」

誰がどの言葉を発したのか把握が出来ないほど、ふっと意識が切れ切れに途絶えてぼんやりとする。が、最後に失礼な言い草をしたのが加州さんだということはなんとなくわかった。
わたしの枕元。そうか。わたしは倒れていて。
いつもこうだ。わたしは、うまくやろうとして、結局大事なところでうまくやれない。
どうしてなんだろう。悲しい。こんな力を持つ以外、自分が平々凡々で、何も持っていないって知っている。
神様はひどい。うまくいかないわたしに、何度でも「お前は駄目だ」と突き付けてくるから。
長谷部さんに拒絶された時のように、胸の奥が痛くなる。
つきん、つきん、と小さな痛みは鼓動と一緒に、まるでこの先ずっと同じように続くのではないかと思う、規則正しい痛みをわたしに伝える。
どうしよう。悲しい。悲しくて……。

「どこか、痛いのか」

声が聞こえて、誰かが手に触れて。
でも、わたしの意識は覚醒しないから、言葉を返せない。

痛いのは、胸の奥。泣いているのは、自分の無力がみじめで悲しいから。
あの花のような人のように美しくなく、この本丸の主のようにおおらかで深い懐も持ち合わせておらず、刀のみなさんのような自負もなく。
心も強くなくて、えっと、体はまあまあ強い方だけど、でも。

「どうして、お前は泣いているんだ……意識がない時ぐらい、思い煩うことなぞないだろうに」
/ 160ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp