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【刀剣乱舞】守護者の恋

第15章 削ぎ落とされていくもの


「その、理解出来なくて良いって思った部分をさ。誰かが彼の心にピンとくる言葉を発して、初めて『そういう言葉で表せば良いのか』ってわかるんじゃないかな……」
燭台切は少し言葉を選びながら話しているのか、普段から早口ではないが、よりゆっくりと話す。
「おもしろいよね。あんなになんでもハッキリ意思表示してるけど、それは、それしかハッキリわかってないからで……主命に忠実すぎるのも、そのせいじゃないかと僕は思うよ。いろんなことを感じて色んなことが見えていても、こう、水をすくうみたいに……落ちていくんだろう。そしたら、手に残るものは」
両手で何かをすくうような動きを見せる燭台切。束穂はためらいがちに言葉にする。
「長谷部さんにとって揺るがない、とてもわかりやすいもの。主命だとかそういう……」
「そう。でも、僕はそういう彼が嫌いじゃないんだ。人は逆だから。揺るがないものが何かよく見極めないまま、思う感じることに都度都度揺れて本心を見失う」
「!」
「それは仕方ない。人の一生は短いからね。早いうちに己を正しく見極めている人物が名をあげるのが、世の理だと僕らはわかっている」
彼の言うそれが一体誰を指すのかは束穂にはわからなかった。が、漠然と「歴史に名が残るような偉人はそういうもので、刀達はそのような人々の元にいたのだろう」と思う。
「……わたし、この前の夜、あのまま長谷部さんとお別れになったらどうしようかと思ったら、悲しくて」
「ん」
「悲しくて、泣いてしまって。それを長谷部さんに『何故泣いた』のかって聞かれて答えても、わかっていただけなくて。悲しむ意味がわからないと……」
ぽつりぽつりと、少し時間をかけてうつむきがちに束穂は言葉にしていく。
「同じように……刀のみなさんが折れれば……主が悲しむに違いないと……そう言っても、何を告げても、長谷部さんはそれはわたしの推測にすぎず……主の本心ではないだろうと……」
「……驚いたな」
「はい……長谷部さんも、長谷部さん以外のみなさんが折れても、主は悲しむだろうに、それを……」
「違うよ、束穂」
「えっ?」
燭台切の言葉に驚いて顔をあげれば、彼は苦笑をして束穂の顔を覗き込む。
「長谷部くんが、何故君が泣いたのかを尋ねたなんて。彼は、きちんとわかろうと思ったんだね。君のことを」
「……!」
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