• テキストサイズ

【刀剣乱舞】守護者の恋

第15章 削ぎ落とされていくもの


(不思議だ)
こうやって一日様子を見ていれば、長谷部は刀達誰に対してもそれぞれの性格を察しているし、きちんと「読めて」いる。伊達に部隊長をしているわけではない。
(そうだ。本当は、そういうことが出来る人……刀なのだ)
多少頭が固いところがあったり、主のことばかりに集中して仲間達への風当たりを強くしてしまったり、そういう部分はある。けれど、しみじみ気を付けてみていれば、彼が言うほど彼は人の顔色を読んだり心を探ることが苦手だとは束穂には思えない。

――こちらが気を使い過ぎれば束穂も余計に気を使うでしょうから、少しぐらい無理させる方が良いかもしれませんね――

見透かされているような気がして、少し恥ずかしかった。
そんな指摘をするのに、それでも「人の心がわからない」などと言うのはなんだかおかしいし、どうして審神者の気持ちがわからないのだろうと、長谷部のことをつい考えてしまう。
シャワーを浴びながらしばらく、足元に流れていく水流を見つめる。
(わかっていると思えば、そこだけぽっかり穴が開いているように、どれほど言葉を重ねても、水がただただ通過するようにわかってもらえない部分がある。どうしてなんだろう)
人と人が分かり合うことは難しい。けれど、束穂の人生の何倍何十倍、いやそれ以上と人間を見てきた刀ならば、意に沿わないことを言う相手であっても、価値観が違えども「こういうことを考える相手だ」とまでは読み取れるような気がする。
そうだ。あの時だって。

――言いたくなければ、いい――

審神者が体調を崩して、束穂が審神者の部屋に泊まることになった夜、燭台切と長谷部と共に、縁側で月の灯りを見ながら。
審神者のことも心配だったし、顔を晒したことも不安で眠れぬ束穂に先に付き合ってくれたのは燭台切だったが、長谷部も彼なりに心を配ってくれていた。
いくらかぶっきらぼうなところはあっても彼の言葉で救われた部分もあったのは確かで。
あんな風に、人の心を読み取って、人の心の動きを追えるのに、どうして主が彼を大切に思う気持ちはわからないのだろうか。
(わたし、どうしたんだろう。馬鹿だな……答えがわからないことを何度も何度も……)
何度も同じことを繰り返し思い浮かべている自分に気づき、束穂は「しっかりしろ」と呟きながらシャワーを止めた。
/ 160ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp