第15章 削ぎ落とされていくもの
夕方になるよりも早く、初日の戦いを終えた長谷部の部隊は本丸に戻ってきた。
負傷者ゼロ、束穂も特に問題なく無事。
前日のような影響を長谷部は感じることがなかったが、骨喰と蜂須賀は違和感があったとの報告。
審神者の部屋には加州・長谷部・岩融・束穂で並ぶ。珍しくそわそわする束穂の様子に審神者が尋ねれば
「……気のせいか、白飯が焦げた匂いが……」
「そうね。焦がしたみたい。水加減を早速間違えたんだって」
と苦笑いの加州。審神者もさすがに苦笑いを見せる。
「まあ、炊き直しているから夕食には間に合うだろう。心配だろうが手は出さないように。慣れさせなければいけないから」
「はい」
「明日は岩融の部隊に同行してもらう。どうかな、長谷部。束穂と一日行動して、岩融が気にした方が良いことなどあれば」
「いや、特には……束穂は女人の割にとてもよく歩けるので、そうペースを乱されることもありませんでした。ですが、初日で気負ってる分もあるし疲れも溜まっていくでしょうから、いつもより休憩を少しだけ多めにとるように心がけてもらえれば良いかと。とはいえ、こちらが気を使い過ぎれば束穂も余計に気を使うでしょうから、少しぐらい無理させる方が良いかもしれませんね」
そう長谷部が言うと審神者は「ははは」と朗らかに笑う。長谷部は岩融を見ながら言葉を続けた。
「それに、戦場では一切邪魔をせずにきちんと後ろで守られてくれる。その点は信頼して良い」
「うむ。心得たぞ」
頷く岩融に束穂が「明日はよろしくお願いします」と言うと、力強く「うむ」と返される。
「束穂、離れに戻って風呂に入ってきて良いよ。髪を乾かす時間も必要だろう」
いつもならば仕事を終えて離れに戻ってからの風呂だが、出かけた今日はさすがに出来るだけ早く入りたいと思っていた。そのありがたい申し出を受け、束穂は部屋を退出した。
慣れた部屋に戻れば、安堵と疲れが噴出してくる。
湯船に浸かりたい。でもそうしたら寝てしまいそうだ。
シャワーで再び身体を目覚めさせ、夕食はとらないと。
本丸に残った刀達は頑張って食事を作ってくれたのだろうし、本丸から持ってきてそれを食べて褒めてあげなければ……
「つ、か、れ」
た。
声に出すと、少し気が晴れる。