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【刀剣乱舞】守護者の恋

第15章 削ぎ落とされていくもの


細かい事情は置いといて、実のところ毎日毎日長い本丸の廊下を一人で雑巾がけをしているのだから、足腰は強い。
「……長谷部さん」
その時、前田が彼にしてはかなり珍しい尖った声で長谷部を呼んだ。
見れば、長谷部は声を出さずに頷いて立ち止まり、骨喰に目線を送る。その意図を察した骨喰は、みなから離れて茂みに紛れながら斜め方向に向かっていく。そして、その反対には何も言わずとも、何も見ずとも山姥切が。きっと、本来ならばその役割は前田なのだろう。
「束穂さん、こちらで身を低く」
前田に軽く手を引かれ、束穂は長谷部と蜂須賀から離れる。
決して口を開かず、静かに事の成り行きを見るしかないと彼女は自分に言い聞かせた。
彼らの様子を見れば、目標としていた相手を発見したのだろうとわかる。
前田は束穂の後ろで、彼女に背を向ける形で待機をする。
しばらくたつと骨喰が戻り、長谷部とやりとりをした。
「状況を報告しろ」
「少し下ってから東。多分、そちら側の山道から降りてくる者達を襲うつもりなんだと思う。ピリピリしてすぐに気取られそうな雰囲気だ」
「取り得る陣形は」
「こっちから仕掛ければ、あちらは地形に合わせて多分逆行陣を取らざるを得ないだろう」
「そうか」
「あとは山姥切」
ほどなくして戻ってきた山姥切は「投石兵を従えている」と告げた。
「もう刀装を解いているのか。骨喰の予想通りだな。では、先手を打たなければ」
長谷部はそう言って蜂須賀に出した指を軽くくいっと動かした。
「うん」
多くは言わず、たったそれだけの返事の蜂須賀。
そして、長谷部は振り返らずに
「前田、頼んだ」
と言って移動を始める。長谷部、山姥切、骨喰、蜂須賀の順で、身を潜めながら進んでいく。彼が行くのは道ではなく獣道に近いルートだ。
「束穂さん、この距離を開けた状態で、静かについて行ってください。僕はあなたの後ろに」
「はい」
緊張が高まる。
前田に言われた通り、蜂須賀の後を間を開けたまま追いかける束穂。
ほどなくして追いつきそうになれば、前田は「ご自身に結界を」と束穂に告げながら、ついに彼女の前に進み出る。それと、長谷部の声はほぼ同時だった。
「いつもならば、恨みがないと言うところだが……」
「今日は恨みがあるだろう」
と蜂須賀。
「うむ。が、私怨には囚われぬ……行くぞ」
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