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【刀剣乱舞】守護者の恋

第14章 人の心刀の心(長谷部の章)2


早朝、いつもと同じ時刻に目覚めた束穂は、既に厨房が朝食の準備を始めていることを確認しながら、門の近くに足を運んだ。
自分がこの本丸から出ることなぞ、まったく想定していなかった。勿論、そういった場合にどうするべきかは、この本丸に来る前にシミュレート済みだ。
朝の澄んだ空気の中、本丸周囲の気配を探る。
幼い頃から、他の子どもたちと「気配」のとらえ方が違うことはわかっていた。最初に兆しが見えたのは、道を歩いている時に「嫌な人がこっちに来るよ」と母に告げた時だった。
視界には誰も見えなかったため、母も、一緒に歩いていた近所の同い年の女の子とその母親は「誰もいないわよ」と「何言ってるの?」と笑ったという。実のところ束穂自身その時の記憶が曖昧で、覚えていない。
それからほんの10秒後、先の角から男性が曲がってきた。それは、一緒にいた女の子の母親に付きまとっていたストーカーだったのだが、当然束穂も母親もそれを知らない。
ただ、一緒に歩いていた女の子の母親だけはそれをわかっていた。わかっていたから、束穂も、束穂の母も知らないうちに、その時のことを他人に吹聴されていた。あそこの家の子はなんだか気持ちが悪い、と。その時以来、必要以上に人の気配を感知しないように、鈍くあれ、鈍くあれと念じ続け、今のところ平時は人並みになれたのだが……
なんにせよ、、彼女の能力を一番最初に気付いたのが母親ではなく他人だったというのは運のつきだった。そして、両親が早くに亡くなったのも。
能力の芽生えと自覚が早かったため、若くしてこうやってそれらの力を使いこなせるようになったのだが、こんな「初めて」の時は少しだけ怖い。
シミュレートで何度もやったことが実際に大丈夫なのか、実績がないものは不安だ。自分がいないこの本丸に、一日自分がいなくとも外敵から守れるような結界を施すのは初めてだ。
いつもは結界と束穂は「繋がって」いる。だから結界に侵入した外敵がいれば感知してすぐに対応をする。だが、今日からはそうではない。
審神者には「繋がらずに出かけてくれ」と言われている。
刀達と出かければ、彼らの戦いに巻き込まれる。そんな時に本丸との繋がりを保持して、何かを感知するのはよくないと審神者は考えた。
だから、本丸は自分達に任せて、ただ、結界は強く張って欲しいと。
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