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【刀剣乱舞】守護者の恋

第14章 人の心刀の心(長谷部の章)2


さて、審神者に「動きやすい恰好で」と言われたものの、普段着物に襷の束穂には、後は現代風の服しかない。
離れに戻った束穂は、慌てて小豆色の着物の丈を思い切って膝上まであげた。後は黒のスパッツでも履けばいいかと思う。
短い筒袖ならば足軽風にもなるだろうが、そんなものは持っていない。
足は、草履風の履物で裏がゴムになっている、現代人のずるいアイテムを持っている。
それから。

「頭巾はとって行った方が良い。何かあった時に過度に怪しまれるし、そもそも表情が見えなければ意思疎通がね。普段ならいいけど、戦場(いくさば)ではそれはよろしくない」

審神者にそう言われて、確かに成程とは思ったけれど、正直気が重い。
髪を後ろの少し高い位置でまとめて無造作にべっ甲のかんざしをとめる。
彼女は決して造作が悪い方ではなかったけれど、普段出さない顔を出すことは苦手であったし、顔に自信はない。刀達は作り手の思いやその造形の結果かみな整ってなんとなく華やかな顔立ちの者が多いし、自分一人地味でなんだか気が引ける。
「でも、もうこの顔を見せてるのだから」
言葉にして呟き、自分を奮い立たせようとする。いや、駄目だ。奮い立つことが出来ない。とりあえず一式身に着けておかしいところがないかどうか確認をしていると、離れの玄関に人の気配を感じる。
「束穂。いるか」
長谷部の声。
自分でも慣れぬ恰好を人に見せるのはとんでもなく恥ずかしい。何故こんなタイミングで来たのかとうらめしく思ったが、仕方なくその姿で玄関に出る。
「はい。なんでしょうか」
「……なんだ、その着物は」
ひどい言い草だ、と内心思いつつ
「明日から外に出るのに動きやすい恰好と思ったのですが。おかしいでしょうか……」
と逆に尋ねれば、長谷部は眉根を潜め、上から下まで眺める。品定めされているとはこういうことか、と「もういいです」と言いたい気持ちを必死に抑え、彼の回答を待った。
「俺にはよくわからない」
「そ、そうですか……」
「お前が動きやすいならそれでいい。それから、頭巾を取っていてくれれば」
「……え?」
どういう意味だ、といぶかしげな表情を見せる束穂。何故長谷部が頭巾のことを言うのか、いまひとつピンとこない。
「明日は早速俺がみなを率いていく。俺と薬研に及んだ影響が薄れたかどうかを確認する意味も含めて様子見だ」
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