第14章 人の心刀の心(長谷部の章)2
「後手であっても今の活動を続けつつ、現代の歴史改変派を黙らせるプロジェクトの進行を待つしかないんだな」
肩をすくめる審神者。
「で、君たちにやって欲しいことは、現時点で観測済の、今回の歴史改変に繋がったと予測される地点で動いているだろう改変派の殲滅だ。結構な量いるから根気は必要だ。それに、何より、過去に拠点を置きながら更に他の時代に君たちを飛ばすなんて芸当をしたことがないから、普段とお互い勝手が違うこととなる」
みなに緊張が走った。その様子に、審神者はへらりと笑い刀達の気を緩めようとした。
「長谷部達のような影響が出ると怖いので、今回は束穂に同行をしてもらうことになる。だから、その間の掃除洗濯食事等は我々で頑張ろう」
「どういうことですか!?」
聞いていないとばかりに声をあげる束穂。
「歴史改変によって君達の調子が狂うことがわかったからね。束穂やわたしは生まれ持っての形でいるから、君達のように魂が不安定にはならなくて済む。それに、彼女がいれば、周囲に誰がいようとすぐに隔離した空間を作り帰路を探すことが出来る。君達が目印を見失っても、彼女なら自分が守っている空間を見失わないはずだ」
「ですが、束穂を戦いに巻き込まないようにするのは難しい」
と一期一振。
「短刀達で特に護衛が得意な者もいるだろう。任せる。外で守ることが初めてでも頼りにしているよ。だから必ず短刀を一人護衛役にしたい。いつ誰が出るのかは短刀達で決めてくれ。明日までには観測された地点いくつに行かなきゃいけないか確認出来ると思う……一度に過去に送れる人数が限られているから、戦力減は当然だ。少し長期戦になるが、それもおかみが解決策を出すまでの辛抱だと信じて、助けて欲しい」
「明日?今日からじゃなくていいの?」
加州が声をあげれば、審神者は笑った。
「束穂がいない間に我々が何をすればいいのか、今日は教わらないといけないからね」
「ああーー、出来れば出陣してぇなあ」
同田貫がそう言って嫌そうな顔をすると、岩融がにやにやとしながら
「安心しろ。誰もお前を『ここ』の戦力に入れておらん」
と言うと、皆がくすくすと笑う。それへ、同田貫は口をへの字に曲げて「ありがてぇような癪に障るような」と答えてから、燭台切と歌仙を指差し「ここら辺が居残り決定だな」と勝手なことを付け加えた。
