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【刀剣乱舞】守護者の恋

第13章 人の心刀の心(長谷部)


山伏と御手杵から話を聞いた後、審神者はすぐに上層部と連絡をとり、今後の手のうちようをはっきりと決めた。
長谷部と薬研のことは心配だったが、物理的に弱っている鯰尾のことも気になる。どうせ自分の部屋に向かう途中だし、と手入れ部屋の前で立ち止まり、そっと障子に寄って声をかけた。
「鯰尾。起きているかい」
手入れをされている間、重傷であれば意識を保てないことがほとんどだ。優しく、もし眠っていたら起こさない程度に囁やけば、いつもよりは少しか細いけれど、はきはきした印象は残っている声が障子越しに耳に届く。
「はい。起きてます。ごめんなさい、明日まで休むことになってしまって」
ほんの少しだけ元気がないように聞こえる。だが、それは今日の鯰尾からすれば「だいぶ元気になった声」なのだ。
「いや、いいんだ。すまなかったね。わたしがおかしな日に送ってしまったせいで。普段なら鯰尾はこんなヘマはしないとみんな言っている」
「なんか、おかしくて。自分の身体が言うことをあまり利かなくて、でも気のせいかと思ってたらこの始末です」
「長谷部と薬研の声が出なくなったことと、同じだよ」
「二人は大丈夫ですか」
鯰尾の怪我の方が深く、自分がいたわられる立場だと言うのに。
優しい刀だ、と審神者は苦笑いを浮かべる。
「うーん、なんともかな。鯰尾は気にせず今日は休むといい」
「はい」
鯰尾も異変を感じていたのだ。自分自身の。
審神者は「うーん」と小さく唸って「やるしかないかあ」とぽつりと呟きながら、己の部屋に向かった。


「束穂、ちょっと」
続く言葉は「お願いしたいことが」だったが、それを言うことは叶わなかった。
すぱん、と彼にしては勢いをつけて障子を開けると、頭巾を取ってぼろぼろと泣いている束穂と、意識が朦朧としている刀二人というとんでもない光景が飛び込んでくる。
「わあああああ、どうした、どうした……」
泣きすぎて頭巾が濡れたのか、とかそんな比較的どうでもいいことを推測しつつ、薬研と長谷部の意識が途絶えそうな様子を十分に把握をする。
「……仕方ないな」
ふう、と一息ついてから、彼らしくもなく早口でまくしたてる。
「あんまり得意じゃなくて出来ればやりたくないが、今すぐ本丸ごと過去に飛ぶ。束穂、サポートしてくれ」
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