第4章 動き出すふたりの思い
相葉side
俺は相葉雅紀。
顔も性格もそこそこの大手企業会社の役員。
業績はトップで社長にも一目置かれている。
最近では会社で最も重要なプロジェクトのリーダーも任された。
俺が近いうち出世するという噂もある。
女子社員からは好意の眼差し。
男性社員からは尊敬の眼差し。
傍から見たらきっと俺はなんの悩みもない充実した生活をおくっている男に見えるだろうな。
実際女の子に不自由したことはないし。
そういやこの間まで付き合ってた同じ会社の子とどうして別れたんだっけ。
…あぁ、そうだ。
たまたま会社の廊下で彼女が友達と話しているところを聞いてしまったんだ。
「私はもう雅紀のこと何でも知ってるわ。彼、私に夢中よ」
…何回か寝ただけのお前に俺の何がわかる。
俺が小さい頃からずっと抱えてる悩みすらしらない奴が。
俺がお前に夢中だって?
そんなことあるわけない。
だって俺にとってお前は―――
かずを忘れるための道具に過ぎない。
そんな奴に俺が夢中になるわけがない。
この時イラついてた俺はその場で彼女に別れを切り出した。
今となっては悪いことをしたとは思う。
でも、会社での偽りの俺しか知らないのにすべてを知ってるかのような口ぶりで話されるのは我慢ならなかった。