第2章 手と声と顔と
大野side
「…だいじょーぶ?大野…さん?」
名前を呼ばれて、恐怖から解放されたのかその場に座り込んでしまった。
「わわ、大野さんっ。大丈夫!?」
智「あ、は、ぁ大丈夫です」
「立てます?手貸しますよ?」
智「すみません。あ、ありがとうございます」
「いえいえ。はい」
智「…!?」
握られた手はあの手。
そう、あの時あのレストランで握手した
“かず”さんの手だった。
俺は握られた手をただただ見つめていた。
和「怪我とかないですよね」
智「……」
和「あの…」
智「あ!はい、な、ないですどこも!」
和「ふふっなら良かった」
智「あの、ありがとうございました!助かりました。」
和「いえいえ…あ、あの…」
智「名前!」
和「へ?」
智「あ、改めてお礼をしたいのでお、お名前とできれば連絡先も教えていただきたいのですが…」
和「別にお礼なんてそんな大したことじゃ…」
智「お願い!…します」
和「は、はぁ…二宮和也といいます連絡先はこの紙に・・・」
智「すみません。ありがとうございます」
和「それじゃあ失礼します」
必死すぎたかな?とは言えあれこれ理由を付けてかずさんの名前と連絡先を教えて貰った。
もっと話をしてみたい。
俺の話を聞いてほしい。
初めてだった。
目が見えないというハンデのせいか
初めて会う人や赤の他人にはある程度の距離を持って接しようという思いがあるのに
二宮さんにはそれがなかった。
むしろもっと知りたい。俺を知ってほしい。そんな感情が芽生えていた。
智「二宮和也さん…かぁ…」
家に帰ってからもあの優しい手と声のことばかり考えていた。