第2章 手と声と顔と
二宮side
和「うー…頭いてぇ……」
ゴミを店の裏に置きに行った時、二日酔いの頭痛のあまりの痛さに腰を下ろした。
昨日は朝まで飲み明かしたから一睡もしていない。
なのに今日はよりにもよって朝からバイトがある。
雅紀は会社休むって言ってたから、今ごろは…ぐっすりだろうな。
いいよなぁ・・・正社員は。
一日休んだくらいじゃクビにならない。
俺の場合は10分遅刻しただけですぐ怒鳴る口うるさい店長がいる。
休むなんて言ったら即クビだろうな。笑
はぁーあ…と溜め息をついていると裏口のドアがガチャッと開いて
店長「こぉらーっにのみやぁ!!何してるっ!」
和「はっはい!すみませんっ!!」
…今日は最悪な一日だ。
そう思った。
“こんな日は歌でも歌おう”
歌を歌っている時だけは心が軽くなる。
全てを忘れられる。楽しくなれる。
バイトが終わると同時に俺は駆け出した。
早く歌いたくて身体がうずうずしていた。
いつも歌っている場所に着いた。
俺はすぐさまギターを取り出した。
初給料の時に奮発して買ったそこそこ良い値段のするギターでがむしゃらに歌った。
今日はいつもより長く歌った。
久しぶりだったからかな。
でもそろそろ帰ろう。
そう思っていつも一応置いてはいるけど
今まで一度もお金が入っていたことはない入れ物を期待もせずに見た。
・・・!!
びっくりした。
だって紙に包まれた金がポンって置いてあるんだよ?
札束・・・初めて見た。
誰が置いていったんだろう?
……
あの背中…大野さん…?
確か、いつか握手した。目が不自由な画家の。
俺は嬉しかった。
お金が手に入ったことが嬉しかったんじゃない。
俺の歌にはこれだけの価値がある、と認めてくれたことそして入れてくれたのがあの、天才だってこと。
それが嬉しかった。