第2章 手と声と顔と
大野side
今日は久しぶりに歩いて帰ることにした。
潤にはすごい心配されたけど。
潤「だめですって!大野さん!
危ないですから僕が送りますって!」
智「大丈夫だって、歩いてると色々と浮かんだりするから。」
潤「ですが…」
智「今日ぐらいゆっくりしなよ、俺の事は大丈夫だからさ夕飯もデリバリーにするし!」
潤「わ、わかりました」
智「うん、じゃあねお疲れ様」
潤「お疲れ様でした」
久々に歩くと色々な匂いとか音を感じた。
この場所に無かったはずの音が流れてたり
きっつい香水つけた女とすれ違ったり
白杖を持ってるから色んな人が色んな世話をやいてくれたり。
どれも全部いい刺激。
うきうきする。
智「たまには歩くのもいいな」
もうそろそろ家という所である歌が聞こえてきた。
「僕らはそんな弱くは無い でも強くもないからー
だからー泣いていいんだ……」
その声が、その歌詞が俺の心の奥底に響いた。
その人の歌ってるその場所から離れられなくて
思わず聞き入ってしまった。
俺は知らず知らずの内に泣いていた。
何で泣いていたのかわからないけど涙が止まらなかった。
その人が歌い終わって、お金をあげて帰った。
彼の歌にはそれだけの価値があった。
この目でどんな人が歌っているのか確かめたかったけどそれは叶わない。
智「いい歌だったな…」
その歌を思い出していたら、イメージが湧いてきて
夢中で筆を走らせた。
夕飯も食べずに。
久しぶりにこんなに夢中になった。
いや、かずさんの手を描いた以来か……