第2章 手と声と顔と
大野side
ジリリリリッ…!
智「う……もう朝か…」
昨日は日付が変わってもかずさんの手を描き続けた。
20枚近くは描いたと思う。
その中でも出来のいいのは2つぐらい。
目が見えない分といったら変だけど、俺は頭の中に鮮明なキャンパスが見える。
それのおかげで周りにはかなりいい評価をされてきた。
でも中には別の人が描いてるんじゃないかとか
本当は見えてるんじゃないかとか言われる。
ま、仕方ないことなんだけどね。
智「ん……ケータイ、けーたい」
目が見えないから料理と掃除はマネージャーの潤にやってもらってる。
智「もしもし、潤?」
潤「もう、着きましたよ。開けてください。」
智「早いね」
潤「そうでもないですよ!」
潤のつくる朝ごはんは絶品だ。
智「今日も旨いね、潤」
潤「褒めてないで急いで食べちゃって下さい
今日は櫻井さんに絵を見せる日ですよ」
智「わかってるよ」
朝ごはんと着替えを済ませた俺は、昨日描いた手の絵を持って仕事相手の櫻井さんの元へ向かった。
翔「おはようございます!大野さん」
智「おはようございます、櫻井さん」
翔「早速ですが見せて頂いてもいいですか?」
智「どうぞ」
この時が1番緊張する。
相手の反応がわからないから良いのか悪いのか
言われるまでわからないからだ。
翔「良いですね!次の個展の作品の一つにしましょう!」
智「あ、ありがとうございます!」
翔「いえいえ!ではこれで!
私も次の仕事がありますので失礼させて頂きます」
潤「詳しいことはまた、私の携帯に連絡下さい。」
翔「わかりました」
智「ありがとうございました!」
これが俺の1日。
いい作品ができたら櫻井さんに見せて個展の作品にするか決める。
機械的で面白くない日だ。