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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第23章 Sad Monster【ドリフターズ】


この時受けた衝撃を、どう表現すれば良いのか?


何故だ……何故、俺はここまで苦しめられねばならん?



素っ裸で跪き三つ指着いて俺に頭を下げる女を、有無を言わさず斬り捨てて仕舞いそうな衝動を必死で抑え込み、俺は冷静を装い言った。

「先ずは…着ろ。
 俺が情欲を抑え込めているうちにな。」

昨夜脱がせた時、木の枝に引っ掛けて置いた女の小袖を放り投げてやる。

俺自身も着衣を整えながら、腹の奥底から湧き出るドス黒い感情に抗い続け………

ふと、思う。


今……『島津斉彬』と言ったか?

『島津斉彬』の……娘だと。



島津斉彬は俺と同じ時代を生きた武人だ。

新撰組結成の四年前に亡くなったと記憶している。

織田信長、徳川家康、伊達政宗の血を引いている稀有な人物。

富国強兵策を推進し、何と言っても俺達が命懸けで護ろうとした慶喜公の将軍擁立を推し進めた男だ。


そう………幕府に楯突く前の薩摩藩主。

会津藩を、新撰組を裏切る前の………同志。


ならばこの女を斬り捨てる理由は………無い。

これが自分の矜持に対する誤魔化しであるのは痛感している。

この理屈が罷り通るのなら、島津豊久だとて俺に恨まれる筋合いは無いのだから。


只、どうしても……

この女の命を奪う事に抵抗があったのだ。
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